




troops, return
同時刻、セクレト機関のロビーにて。
「呼び戻されたのはいいけど、なんでまた俺たちが呼び戻されたんだろうね」
茶髪の長身男性――オスカー・マンハイムの言葉。
「まあ、エーリッヒさんやエミさんが先に呼び戻されてるって言うてたしなあ」
赤髪の長身男性――テオドール・フレッサーの言葉。
「でも、全員戻されるのって結構珍しくない? 普段はテオさんかオスカーさんだけなのに」
白髪の癖っ毛男性――コンラート・ベトリューガーの言葉。
「確かにな……エミさんやメルさんだけじゃダメやったかもな」
茶髪の長髪男性――ヴィオット・シュトルツァーの言葉。
現在、司令官エルドレットにより『諜報部隊オルドヌング』の帰還が告げられており、
所属している彼等4人は猟兵業務を一旦停止させて戻ってきていた。
彼等もまた燦斗やエーミールと同じく、猟兵業務中は戻ることは許されていない。
「……猟兵の仕事を続けながらも、こっちを手伝えって言うてはったな」
「そこが珍しいよね、今回。……何か重大事件でも起きたのかな?」
テオドールとオスカーが色々と考察を重ねてみるが、
いち戦闘員である彼等には命令以外の考えなど予測もできず。
後ほど、指令を受け取ってから事態を把握しようと決めた。
「ってか、俺らだけなん? カスパルさんとかロルフせんせとか、どこおるん?」
「さあ? っつーか集合場所指定してへんのちゃう?」
「あちゃー」
コンラートとヴィオットは他に来る仲間達が来ていないことを心配していたが、
そもそも集合場所を決めていないのが悪いんじゃない? ということで
司令官エルドレットが指定しなかったのが悪いと結論付けておいた。





I missed meeting
また同時刻、セクレト機関のオルドヌングのミーティングルームにて。
「おいおいおい、テオもオスカーもおらへんやないか!」
不思議な髪色を持つ男――カスパル・シュライエンの怒号。
「あれー、おかしいなぁ。皆で集まろー言うてたのに……」
キョロキョロとあたりを見回すのは青髪の男――ロルフ・ディスプレシオ。
「何処行ったんやろなぁ。コンラートとヴィオ君もおらんやん」
廊下をもう一度確認してみる茶髪の男――シェルム・シャッヘ。
「もしかしてアイツら、集合場所間違えたとかあらへんやろな」
渋い顔をしている面帯の男――ローラント・シュタルク・ローゼンミュラー。
そう、彼等はローラントの言う通り、集合場所を思いっきり間違えているのである。
テオドール、オスカー、コンラート、ヴィオットはロビー集合と考え、
カスパル、ロルフ、シェルム、ローラントはいつものミーティングルーム集合と考え。
考えのすれ違いによる集合は彼等にとってはいつものことだが、今回はいつにもまして酷い。
エーミールとメルヒオールとも合流しなければならないというのに、
こんな合流状態があっても良いのだろうか。
「どうする??」
「アイツらが痺れ切らして来るの待ってようや。めんどくさい」
カスパルの問いかけに即答で返したロルフ。
こういうのはいつもあることだし、待ってりゃ来るだろうと。
「ちなみにエミさんとメルどっちが来ると思う??」
「俺はエミさんがこっち来ると思うで」
なお、シェルムとローラントは賭けていた。
エーミールとメルヒオールは、どちらに来るだろうと……。



What are they doing?
そして同時刻の司令官室にて……。
「エミさん、アイツら何処集合してると思う?」
メルヒオールが問いかける。
どうせいつものが発動してるかもしれないからと。
「ミーティングルームは当然ですが……うーん、あとはどこでしょうね」
エーミールが答える。
ミーティングルームはまあ、いつもの集合場所だからいいとして。
他の集合場所がよくわからないといった表情で。
「親父もちゃんと集合場所指定しろよなぁ。じゃないと自由奔放やぞ、俺ら」
「そうですよねぇ。下手すると全員バラバラな場所にいますよコレ」
2人同時に大きなため息をつく。
部隊を集めるのだったら、せめて指定してくれとエルドレットに懇願しながら。
そうして2人はどうやって集めようかと悩んだ。
エルドレットの通信を使うのも考えたが、彼は現在別のことをしているので不可。
他にも通信手段はあるが、猟兵として戻ってきたばかりの彼等にはそれは使えない。
「どうする? 放送かける?」
「みっともないのでいいです。探しに行きますよ」
「晒し上げの意味でも放送してよかったと思うけど」
「……あー……じゃあ迷子放送でもかけますか……」
などと2人で様々なことを言い合いながら、
諜報部隊オルドヌングのメンバーは集まっていく……。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル