the one who invades
――このエルグランデには、人ならざる者も存在する。
そう伝えられた時、あなたは何を思い浮かべる?
海辺に集まった影の大群?
モルセーゴの大群?
影で生まれた子供達?
そのどれもがYESと言える。
現実に、そのどれもが人ではない何かだから。
そしてそれは、司令官システムにも当てはまる。
初めて発現したコントラ・ソールの所持者達の脳を集めた、異端のシステム。
200年ほど前、フェルディナンド・ウル・アビスリンクが作り出した世界の守り手。
およそ人の所業とは思えない、人ならざる者。
ナターシャ・アールツト・アイゼンローゼは『簒奪者』。
エルドレット・アーベントロートは『世界介入』『審判者』。
スヴェン・ロウ・ヴェレットは『呪術師』。
エスクロ・シェルシェールは『蒐集者』。
マリアネラ・ヴェレットは『解析者』。
アレンハインツ・ニア・ウォールは『過去視』。
こうして人と同じコントラ・ソールを持っていたとしても。
人と同じ肉体と精神を持っていたとしても。
彼らは人ではない、なんて言うかもしれない。
けれど、そんな人ではないと言われる彼らでさえ、証明できない存在がいるとしたら?
誰にも存在を知られず、今を生きる人と変わりない存在がいるとしたら?
あなたは、どうするか。
『……なんて語られてるけど、どうするかなぁ』
何処かの空間で、1つの声。
『……どうということはないでしょう。まだ、我々は気づかれていないのだから』
もう1つ。
『【同位体】、お前が既に渡しているだろうに』
最後にもう1つ。
合計3つの、不思議な声が何処かで響く。
それは誰にも気づかれない音。
それは誰も知らない音。
エルグランデに住まう者の中で、この音を知っている人はいないだろう。
……少なくとも、今は。
『そっちの【同位体】はこっちに与しないってことで、OK?』
『そうなるなら、我らは【同位体】と敵対することになりますが』
2つの声が、残った1つに向けて意思の確認を取る。
しばらくの沈黙の後に、残った1つは2つに向けてこう答えた。
『我らは個に非ず。大いなる意思のもとに』
『故に【同位体】、あなた達も我らの敵となろう』
その言葉を最後に、3つの音は途絶える。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル