top of page
青空.png

stray child

「ヴィオくーん……どこ~……」

コンラート・ベトリューガーは現在、マリネロの街で迷子である。

先程、狐面を被った人物ヴィオットの場所を教えてもらったが、それでも迷子である。

平原にいるって言われたのだが、マリネロの街の出口は3箇所あるから余計にわからなくなっていた。

「えー……西口まで行くのぉ~……??」

北口、南口と探し終わったコンラート。

​南口の方に出てもヴィオットらしき人物はおらず、もう体力もなくてへとへとだった。

合流しろと言われても、ここまで来て体力がなくなるのはきっとおそらく狐面の男も想定外だろう。

少しだけ身体を休めるため、近くのベンチに座り込んでへたりこむ。

隣においてある自販機で飲み物を買って、喉の乾きを潤して。

「…………」

ぼうっと、行き交う人々を眺める彼は時折モノクルの鎖を指で弾いたりして、暇をつぶす。

けれどその頭の中は、あることが浮かんでいて仕方がない。

「……やっぱり子供、少なくなってるような気ぃするなぁ……」

チリチリとモノクルの鎖を指で弄びながらも、どうしても気になったことを口にする。

それは昔の記憶と今の記憶に違いがあるからで、排除できぬ項目だった。

アルム・アルファードの墜落と共に判明した、少しだけ残る謎。

​それが解明されるのは今ではない……。

***

「よっこいしょ。じゃあ西口行かなきゃね~」

休憩を終えてすたこらさっさと走ったコンラート。急がねば、ヴィオットが怒るのは間違いない。

けれど彼は急ぎすぎて前を見ていなかったせいで、唯嗣・たからとぶつかってしまった。

「わっ!?」

「あわー!? ごめーん!!」

彼女は両手に持っていたドーナツとチュロスを守るように転げ、お土産(仮)の平穏を保つ。

その後彼の手を取って立ち上がり、コンラートに色々と尋ねた。

女の人がゲートを通ってきたから、情報収集したいこと。

怪しい人は見かけなかったかどうか。

一番情報収集しやすい場所を教えてほしいこと。

色々と伝えたのだが、コンラートは最後に一言だけ言った。

​「俺と一緒やん!!」と――。

青空.png

received letter

それからしばらくして、たからは自分の呼び寄せたからくり人形 クロが手紙を持っていることに気づく。

手紙の送り主はわからないが、読み進めるうちにそれが『エレティック・リュゼ・ルナール』からの手紙だとわかった。

***


 猟兵諸君へ
突然の手紙、すまないね。
私はエレティック・リュゼ・ルナール。キミ達の協力者だ。

この手紙を読む頃には、アルム殿のゲート作成者情報が消されていることがわかっているはず。
ゲート作成者情報が消された理由を私は既に握っているが、現時点でキミ達への接触は難しい。
故にこうして、手紙を書かせていただいた。

ゲート作成者は既にセクレト機関の中枢に存在している。
巧妙に姿を隠しながらも、司令官になりすまして様々な情報を書き換えているようだ。
司令官の言葉を借りるなら『裏切り者』といったところだろう。

もしこの情報をエルドレット司令官に渡したいのなら、以下の言葉を伝えてくれ。

◆秘密《セクレト》に潜む救世主《サルバドル》を解き放て

……ああ、決してエーリッヒ殿ヴォルフフェルゼンには聞かれないようにしてくれ。
必ず、エルドレット司令官のみにお伝えするように。

P.S.
そういえば先程、コンラート君をヴィオット君に会わせるように向かわせたが、会えているだろうか?
彼らは離れ離れにしてはいけないよ。

***

彼から渡された手紙の内容はこの通り。

しかし、この手紙の通り本当に彼が協力者であるかどうかはわからない。

彼と協力するか、手を跳ね除けるか。

​それは猟兵達の選択次第――。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

bottom of page