


Recovered
「にゃ~ん」
「うにゃ~」
「わわわ、猫ちゃん待って~」
ナルニア・ネーネリアに連れられたアルムと。
「いーきーたーくーなーいー」
「いーきーマーショーウー」
なんとも不可思議な光景が広がっていた。
マリネロの街の海岸で集まったアルムは、ルナールからクリスタルを預かった。
白い光に包まれた後に、彼女は自分が何者なのかをすべて思い出した。
どうやらクリスタルはアルムの記憶が具現化したものだったため、
『記憶』という事象が存在することが異常と判断した司令官システムでは見えなかったようだ。
彼女はジャックを『イズミ兄ちゃん』と呼んだ。
これまでよそよそしかった態度が、おちゃめな性格に変わった。
何かあれば必ず手助けをするとさえ、断言するほどに。
「しかしそうなると、アルム殿のやるべきこととは?」
「あっそうそう! 『ヴェレット家の天体球を守れ』って言われたんです!」
「誰に??」
「普通に考えるならフェルゼン、だよなぁ」
「にゃ~」
アルム曰く、この世界に来る前に誰かに『天体球を守れ』と言われていた。
天体球はエルグランデ外の宇宙を見ることが出来る不思議なアイテム。
もしこれを告げたのがフェルゼンだとしたら、
この段階で外からミメーシスが来る、ということを伝えたかったのだろう。
結局アルムが記憶喪失だったため、遠回りして今やっと知ることが出来たのだが。
「ともあれ、これでここの情報は揃った……」
エルドレットが作戦終了の合図を出そうとした、その瞬間。
司令官システムから緊急通報が鳴り響き、世界全体に声が響いた。
『ミメーシス、襲来』。
その一言だけ。


Not there
「……何故、今まで気づかなかった……?」
セクレト機関、司令官システムの中枢。
システムを担っている者達の脳が集められている場所。
十数年ぶりに訪れた燦斗は、ある事実に気づいた。
『アステリ・ラス・ヴェレットの脳はここにはない』。
本来であればありえざる状況。
司令官システムとは、コントラ・ソールが初めて発現した者の脳が集められている。
その他大勢のシステムのメンバーも、全員『世界に最初に発現した』ソールを持ち、脳を預けている。
だけど、この場所にアステリの脳はない。
だけど、アステリはシステム内部にいる。
大きすぎる矛盾が生まれてしまっているのだ。
「……どういう、ことだ……?」
考える。考える。考える。考える。
考える。考える。考える。考える。
どうすれば、そんな状況に陥るのか。
どうすれば、そのようになるのか。
燦斗は無理矢理にでも考えて――……。
ミメーシス襲来の警報音が、耳を貫いた。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル