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「うーん……ゼン、何か見落としてるとかないかね?」
「私にそれを問われましても……。ヴォルフやエーリッヒ殿に聞いたほうが良いかと」
セクレト機関の司令官室にて、エルドレットとフェルゼンの2人が悩む様子があった。
元々は侵略者《インベーダー》からの侵略を食い止めるために考えていたが、
いつの間にか考え方が『何かを見落としていないか』にすり替わっていた。
「リアちゃんはなにか無いー?」
「うーん、エーミールお兄様がここ最近不調気味ということしか……」
同じく司令官室で仕事をしていたエミーリアは、先日起きたエーミールの不調を思い起こす。
珍しくエーミールが不調を起こしているという点では、エルドレットも不思議に思ってはいたそうだ。
しかしそれが本人の過労のせいなのかどうか、原因の特定には至れていない。
そのためエーミールはしばらく休暇を取り、緊急時以外では自室で安静にしておくようにと厳命が下っていた。
「ミルの不調は逐一モニタリングしてるけど、目立った原因がないのがなぁ」
「ストレスによるものかもしれません。後ほど私が診察してきます」
「ありがとうですの、フェルゼンさん!」
「何、これまでの恩返しだと考えておりますので」
優しげな笑みを浮かべ、フェルゼンはエーミールの診断結果をエルドレットから受け取る。
この情報を元に、彼をもう一度診察してみるとのこと。
そのついでに何か情報がないかを問うそうだ。
「まあ、ミルは情報ないって言いそうだけどねぇ」
「エーミールお兄様、《賢者《ヴァイゼ》》持ってても脳筋ですので……」
「誰のせいで脳筋になったとお思いで??」
「え、メル?」
「エーリッヒお兄様?」
「先生とエミーリア嬢のせいなんだよなぁ……」
……なんて、軽いやり取りが司令官室で行われていた。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル