

Checking answers
「……ああ、なんだ。そういうカラクリだったのか」
箱庭世界のとある場所で、ベルトアが呟く。
ミメーシス襲来までに集められた情報を精査し、謎を少し解き明かしたようだ。
何故世界の空に大穴が残り続けていたのか。
生きていれば80を超えるアステリが何故若い姿のままなのか。
出来る限り導き出せる答えを、己の脳だけで導き出した。
「通信が繋がったのは、アステリおじさんがシステム入りを果たしたから」
箱庭世界にアステリがいる状態のまま、司令官システムに入ったことで繋がりを得たと判断するベルトア。
本来であれば繋がることのない、世界と世界の通信。
中継となる存在が箱庭世界側にいるのであれば、司令官システムに繋がるのは容易い。
不安定にならないのもアステリが『司令官システムとして』存在しているからだろう。
「大穴は大胆に世界移動した奴のせいでもあるけど……1番は『アレ』のバグだな」
エルグランデの空に浮かんだ大穴はそもそも原因が予見できなかったもの。
そのせいでゲートという形に異変が生じ、大穴が存在してしまっていた。
だがベルトア曰く、大穴が残り続けた理由は別に存在する。
《無尽蔵の生命《アンフィニ》》コピーを持つエーミールか。
あるいは未知のソールを持って若いままのアステリか。
どちらかのもつソールが不具合を起こしている可能性が高いと結論が出ていた。
「アステリおじさんが若い姿なのは、『エルグランデの外にいる』から。エーリッヒと逆に」
アステリ・ラス・ヴェレット。彼は通常であれば御年80を超える。
しかし彼はまるで燦斗と同じように、姿が若いままを保ち今を生きている。
これは燦斗とは逆に、エルグランデの外にいることで不老長寿を得るソールが発現したと考えている。
そしてアステリがエルグランデではなく箱庭世界にいるのは、
『既に《無尽蔵の生命《アンフィニ》》がある世界に存在できないソール』だからだと。
ここまでの答えを導き出して、最終的にベルトアは『アステリの目的』を考える。
既に彼がシステム内にいないことは把握済みだ。となれば、あとは何をやるかを考えるだけ。
……とはいえ、アステリとはそこまで付き合いは長くない。
せいぜい、フェルゼン達の伯父であることを知っている程度。
そんなアステリがやることは……。
「……待てよ……?」
ふと、3つ目の疑問――未知のソールの条件『エルグランデの外にいる』に気づくベルトア。
今現在、アステリがエルグランデの外にいて不老長寿となっている。
つまりそれはエルグランデでは生きることが難しいことを意味しており……。
――ミメーシスを取り込んだ身体のまま、エルグランデに戻ったらどうなるのだろうか?

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル