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Unidentified

「お前と通信出来るとは思わなかったよ、トア」

『俺も。エルとアマベル元気にしてます?』

「元気に仕事やってもらってる」

『あんれまあ』

大穴が空いた影響か、それともアマベルレティシエルが出向いた影響か。

理由は分からないが、エルドレットは現在、ベルトアと通信をしている。

箱庭世界との繋がりを得たことで情報交換がしやすくなったようだ。

……と言っても、最初は世間話やら何やらで時間を潰していたが。

話は徐々にアビスリンク家に残されていた赤い本の話へ移る。

エーミール曰く、赤い本は世界が干渉してくる警告の書。

そこに名前が書かれた者はすべて、世界本体が危険視している存在だと。

フェルゼンとエーミールはまあわかりますよ。今明らかに敵だし』

「お前さんはいいのか? 名前、書かれてるけど」

『ん……まあ、予測はしてたんで』

「ふぅん……」

ベルトアは自分の名が赤い本に書かれていても、特に驚く様子はない。

まるで最初からそうなると知っていたかのような素振りだ。

逆に驚いたのは、ベルトアの家に仕える執事マルクスの名があることだった。

『フツーに俺んちやおフェルんちの世話してくれたぐらいなんだけどなぁ』

「いつから仕えてるんだ? マルクスって」

『えーっと……フェルディナンド・ウル・アビスリンクの時代かららしいっすよ』

「…………は?」

エルドレットの表情が固まる。

フェルディナンドという人物に心当たりがあったようで、直後に驚きの声を上げる。

フェルディナンド・ウル・アビスリンクは200年前の人間。

《無尽蔵の生命《アンフィニ》》が世界に存在するよりも前の時代に生きていた者。

そんな人間がいる時代からアビスリンク家に仕えていたマルクス。

普通に考えれば、何もなく200年も生きていたことになるわけで。

「どういうこった……。本当に世界に害をなす人物だってのか?」

『うーん。アイツの性格からして、なさそうなんだけどなぁ……』

頭を悩ませるセクレト機関のトップと、箱庭世界のトップ。

​そんな状態なんて些事だと告げるかのように、時はゆったり過ぎてゆく。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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