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What she forgot

「あー、これかぁ?」

とある場所で、ベルトア・ウル・アビスリンクが画面とにらめっこしている。

画面にはエルグランデの地図に加え、大量の表がずらりと並んでいた。

どうやら彼は表に書かれた座標と地図を照らし合わせていたようだ。

AIに任せればよいのだが、そういう点は信頼できないからと自分の手で1つずつやったそうで。

「同志、なにかわかったのか?」

コーヒーを持って、ゲラルトがやってきた。

​ベルトアの分もしっかりと手渡しつつ、画面を見たが……ゲラルトは首を傾げていた。

というのも、ベルトアの持つ表が『ゲートの発生座標』をメモしたものだからだ。

今になって何故彼がエルグランデのゲートの発生座標を調べているのか。

その理由がとんと浮かぶことのないゲラルト。

これでもわからない? とベルトアが管理する世界の地図を見せつけられても、だ。

「俺は戦闘員だからな。そういうことは調査人や研究員に任せてきた」

「マージかぁ。じゃあ簡単に言うと、これは『アルム関連』になる」

「王女関連? ということは……」

これまで表で色々と起こっている間、ベルトアは裏でアルムの記憶に関しての情報を集めていた。

エルグランデ側からでは妨害を受ける可能性があったため、彼がひっそりと動いていたと。

おかげで膨大な数のゲートの発生座標と格闘することになってしまったが。

しかし箱庭世界側からアプローチを掛けたことで、あることが判明した。

アルムを狙ってゲートが作られたこと、そして……。

「彼女の記憶を失わせた原因は《忘却《オルビド》》のソールによるものってのがわかったよ」

「……ということは。使用者を見つければ……?」

「そうなる。ただもうちょっと調べなきゃいけないことがあるんだよな……」

「どういうことだ?」

ベルトア曰く、アルムの通ったゲートに《忘却《オルビド》》が仕掛けられていたことは確かだ。

しかし、その仕掛けた犯人――フェルゼンが使用したという形跡が見当たらない。

代わりに使用者が『ザビーネ・シェン・ヴェレット』になっているのだ。

本来、コントラ・ソールの使用者は変えることが出来ない。

《模倣《コピー》》や《盗賊《シーフ》》で手に入れたものだとしても、

それは『使用者のコントラ・ソール』と認識される。

ザビーネが使用したわけではないのに、ザビーネが使用したと認識される状態はおかしい。

「だから、アイツにはなんかのカラクリがある。それを調べようと思ってな」

「認識を変える、か。その手のソールを使ってる者に話を聞くか?」

「だなぁ。誰が浮かぶ?」

「俺からは……コンラートが該当するな。あとは同志、キミもだ」

「俺もかぁ」

コンラートとベルトア。認識変更ならばその2人が浮かんだというゲラルト。

他にも様々な使い手はいるだろうが、身近なのは彼らぐらいなもの。

認識変更を行うソールは様々だが、多用しているところは2人しか見たことがないと。

とはいえ、2人の持つコントラ・ソールで再現ができるかと言ったら、わからない。

妨害系は組み合わせが特に難しいことから、調査に時間がかかるようだ。

「あ、そうだ。先生にアレお願いしとかねぇと……」

かたかたと何かを入力していくベルトア。

​画面に表示されているのは、エルドレットとのチャット画面……。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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