




The keepers of the order
「失礼するよ」
諜報部隊『オルドヌング』のもとへとやってきたスヴェン。
室内にいたカスパル、オスカー、ローラントの3人が重い空気のままに彼を迎え入れる。
エーミール・アーベントロートの世界の敵認定。
メルヒオール・ツァーベルの離反。
ここ最近、オルドヌング内でもいろんなことが起こっていた。
あまりにも色々と起きすぎて、彼らも整理がつかずにこうして会議中だったようだ。
「おじさん、どないしたん?」
そんな空気の中で、スヴェンとは親しいオスカーが口を開く。
問いかけには『命令はあるのかどうか』という意味も含まれているようだ。
その言葉の意味をきっちりと理解したうえで、スヴェンは小さく唸って……。
「1つ、オレからあなた達に依頼を出したい」
「ほん?」
その言葉にオスカーが首を傾げ、カスパルとローラントもまた小さな反応を見せる。
というのも、彼らはヴォルフ以外からの依頼というのはあまり来ることがないからだ。
本来、ヴォルフからの命令や依頼しか受け付けないのが『オルドヌング』の理念。
しかしそれはヴォルフが司令官補佐という立ち位置を持っているからであり、
何かヘマをやらかしたとしても色々と処理してくれるからだ。
しかし、それより上の立場である司令官システムはそれ以上の処理をしてくれる。
失敗の揉消はもちろんのこと、現場に残った痕跡の処理等全て。
ならばスヴェンからの依頼を受けない理由は何処にもないだろう。
……給料も弾んでくれるだろうし。
「今動けるのはオスカーとローラントぐらいですけど」
「む、カール君、あなたは?」
「俺はエミさんとメルの動向探りの命令降りてるんで。アレンから」
「弟が司令官システムにいるというのもなかなか大変そうだな、あなたも……」
裏を返せば、司令官システムに実の弟であるアレンハインツがいるカスパルは
彼から連絡を受けたら嫌でも命令を受けなければならない。
たとえそれが『家族間のお願い』だとしても、カスパルは『命令』と取らざるを得ないもので。
なかなか厄介なシステムだが、カスパルはむしろそれで給料を稼いでいるのだそうだ。
「なるほど、あなたの給料が妙に高いなと思ったらそう言うカラクリだったか……」
「システムと俺等の制約の隙ついて稼ぐなやお前」
「しゃーないやん!! アレンがしょーもないことでお願い言うてくるし!」
「まあうちの兄貴もしょーもないことで箱庭世界から連絡するし、似たようなもんかぁ」
からから笑ったオスカーと、軽蔑の眼差しをカスパルに向けるローラント。
スヴェンが彼ら2人に与えた仕事は――『室内調査』だったという。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル