


Reason
「……まいったなぁ。これは見えてなかった」
司令官室で小さく呟いたエルドレット。
どうやらコントラ・ソール《預言者《プロフェータ》》が見ていない未来に到達したようだ。
唯嗣・たからが持ってきたエレティック・リュゼ・ルナールからの手紙。
そこに書かれていた合言葉は『秘密《セクレト》に潜む救世主《サルバドル》を解き放て』。
この一言が何を意味するのかはよくわからなかったが、エルドレットには多大な効果があった。
「まさか、ジャックを自由にしろってゼ……ルナール教授から連絡が来るとはなあ」
「どういうことだよ。ちゃんと説明しろ」
「んー、まあこれは例の件が絡んでいるとしか言えない。お前に話せない、例の件」
例の件――猟兵達には伝えられている『裏切り者』の件。
この裏切り者をどうにかするために、ジャックが派遣されたのだが……
派遣してきた人物がこれまた、ヴォルフも驚く人物。
30年前の事件で行方不明となってしまった男、ベルトア・ウル・アビスリンク。
なんと、彼が箱庭世界からジャックを派遣したというのだから。
「えっと、そしたらジャックさんは……」
「彼はトア……ベルトアからあるコントラ・ソールを受け取っているんだけど、登録が俺じゃ出来なくて」
「……あれ? そしたら、誰が?」
「そこでルナールの出番。ある人物から手紙を受け取って、登録してくれたみたいだ」
ある人物とは誰なのかと、たからが問う。
するとエルドレットからの返答は『ゲラルト・フィリップ・フュッテラー』だと返ってきた。
彼はベルトアとルナールを繋ぐパイプの役割を担ってくれていたようだ。
しかし彼は更迭された。『このままじゃいけない』と。
だがエルドレットはむしろ更迭こそが彼を自由にすることが出来る術だと告げる。
「彼は犯罪者レベルの人物だったからね。命令がないと動けない縛りで働いてもらってたんだ」
「じゃあ、今回の更迭理由って……?」
「命令なく、動けるようにってこと。そうしないと……」
「……お手紙、運べない……!」
真意に気づいたたからは、キラキラとした目をエルドレットに向ける。
そこまで考えられて、この組織は動いていたんだ……と。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル