えいぷりるふーる
「エイプリルフールという催しがあると聞いたぞ!」
「聞いたよー」
「今一番聞かせちゃいけないヤツに知られたァ!!」
目をキラキラ輝かせるスヴェン。
ほけーっとした様子のマリアネラ。
ツッコミを入れるヴォルフ。
エイプリルフールという概念のなかったこの世界で、その情報を知ったのは去年。
『ウソをついても良い日』。
そんな楽しい日があるのなら、遊んでみるに限るじゃないかと。
「でも嘘をついていい人って誰だろ」
マリアネラは考える。
ウソをついてもいいということはわかったが、じゃあ、誰に向けてやるのだ? と。
去年はエルドレットが自分の息子である燦斗に向けて嘘をついた。
じゃあ、今回は?
「ふむ。オレからしたらフェルゼンかキーゼルしか思い浮かばんな」
「物理的に向こうからアンタらに手を出せないからって実の息子にそういうことする??」
「ははは」
「でもまあ、父様の言う通りなんだよねぇ~」
フェルゼンは今や世界の敵となって行方不明で。
キーゼルは……ウサギ退治でてんやわんやな状態。
そんな彼らに今ウソついたらどうなるんだろう、とちょっと楽しみにしている様子のスヴェン。
マリアネラは止める様子はない。むしろ、兄らの様子を見てみたいと言う。
「……余計なお世話かもしんねェけどよ……」
はぁ、と大きくため息をついたヴォルフはエイプリルフールにおけるルールを伝える。
傷つけてはならない、本当になりかねないウソは禁止と。
それを伝えられた途端、2人は揃って『え』と言い放った。
「え、って。え、って何」
「いや……宇宙から星降ってくるよって言おうと思ってた」
「あたしは兄さん達の大好きなお菓子値上げだよって」
「だからアンタらにこの行事教えたくなかったんだよなァ!! もお!!」
更にツッコミが加速したヴォルフはすぐさまエルドレットに連絡を入れ、
2人を今日1日システム内から出すな! ときつく叱っておいた。
ちなみに結局フェルゼンとキーゼル(ルナール)には上記のウソが伝えられ、
しばらく2人は恐怖と落胆を繰り返していた。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル