

The answer is close at hand
「カラクリさえ解ければあとはこちらのものですよ」
司令官室にて、楽しそうに笑っている燦斗。
彼はアステリ・ラス・ヴェレットの状態を確認して、ある答えを導き出した。
『エルグランデの外にいる間は燦斗と同じ不死の肉体』。
その事実さえわかれば、あとは燦斗の領域だ。
なにせ彼は《無尽蔵の生命《アンフィニ》》を持った始祖でもあるのだから。
「私の力は、そもそもこの世界と繋がっていなければ発動しない」
「では、アステリさんはどうかといえば……『全く同じ』」
「要はアレが存在している世界であれば、何処にいたとしても同じこと」
《無尽蔵の生命《アンフィニ》》のカラクリはひどく簡単なもの。
自身が永遠の命を持つために、他者の命をわずかに奪い取って己の命とすれば良い。
たった1人から奪い取れる命の総数は少なくとも。
多数の存在から奪い取れば、その総数は膨大なものとなる。
《無尽蔵の生命《アンフィニ》》はゲートの存在がなければ起動しないコントラ・ソール。
故に燦斗はゲートのある世界か、あるいは不死性が確認される世界でしか生きることが出来ない。
《無尽蔵の生命《アンフィニ》》という力が存在するためには、
エルグランデから伸びるゲートの存在がなければ確立することが出来ないのだ。
「だけど、アステリさんの『それ』は《無尽蔵の生命《アンフィニ》》とは違う」
「言うなれば《不完全な生命《インコンプレータ》》……。エルグランデ以外でないと使えないのが欠点でしょうか」
「まあ、その欠点が今回は利点として使えるのでしょうけれども……」
燦斗いわく。
アステリの《不完全な生命《インコンプレータ》》はエルグランデ以外であれば完全なもの。
肉体はちゃんと若いままで、衰えることなく死ぬこともない。
ただしそのままでエルグランデに戻ってしまえば、自分の命を消費して完全に肉体を滅ぼすことになる。
……ならば、その身体に。
《無尽蔵の生命《アンフィニ》》が存在すると勘違いさせたままに。
肉体をミテラ・ミメーシスに明け渡せばどうなるのか?
「まあ、ミメーシスが逃げ出すに一票でしょう。通常であれば」
「ですが、フェルゼンが1つあるものを用意している」
「それが、ソールによる定着。ミメーシスという物体を留めるための楔」
彼が用意していたのは、何もミメーシスの母を入れる容器だけではなかった。
コントラ・ソールを扱うためのソール物質。その存在がある働きをすることに気づいたようだ。
「フェルゼンの身体からミメーシスが出ていかないのは、きっとソール物質も関係している」
「だから彼の身体からはソール物質の相数が少なくなっている結果が出ていた」
「……彼はまだ、完全に意識は奪われていなかった。だからこそ……」
小さく呟くと、ある研究結果を表示させた燦斗。
そこに記載されているのは、ソール物質による異世界物体の定着研究結果。
これによればソール物質は肉体にミメーシス体を定着させることが可能だという。
またミメーシス体の定着において最も有効活用できるのが『リンクシステム』。
人体が持てる総量を増やすことでどんなサイズのミメーシス体でも定着させられるようだ。
「かなり大変なことしてますよねえ、彼」
「だから、まあ。アステリさんの作戦と共に利用するつもりでしょうね」
リンクシステムでフェルゼンとアステリを繋いでソール物質の総数を増やし。
アステリにミテラ・ミメーシスを定着させて逃さず。
アステリの肉体がエルグランデへ戻ることで、その命は消滅の一途をたどる。
「それが、彼らの作戦でしょうね」
淡々と、燦斗が【誰か】に向けて呟いた。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル