



Brothers and nephews
現在ゲラルトがいないため、レティシエルの息子ベルディが共に部屋にいた。
アルムを守るための騎士であるならば、彼女のそばにいた方がいいと思われたが、
記憶喪失状態のアルムはベルディを怖がってしまって、共にいることが出来ないのだそうだ。
「せやったらレイ兄貴んとこ行きゃよかったやん」
『レイ兄貴の部屋はアマベルさんと2人が限度やからねぇ……』
カスパルがもっともな意見を述べ、それに対しアレンハインツが答えを返す。
レティシエルとアマベルがいる部屋は2人が限度であり、ベルディが入る余地はない。
そのため流れ的にレティシエルの縁者であるカスパルの部屋に入らざるを得なかったのだ。
「まあ、カスパル卿ともお話をしたかったので丁度良かったですよ」
「あー、まあせやろなぁ」
カラカラと笑い、煙草を取り出して吸い始めたカスパル。
小窓を開けて風を外へと送り、煙を外へと追い出していく。
ベルディやアルム達の世界でのあれこれ。
アルムがいなくなったことによる国家間の情報共有状況。
ジャックからの連絡が途絶えたこと。
ゲートの存在が各国に散見されていること。
その他、奇妙な子供達が一箇所に集まりつつあること。
様々な会話がカスパルとベルディの間で繰り広げられたが、ここでアレンハインツが疑問を呈した。
『というか、ベルディってカールのことなんで知ってるん??』
そう、アレンハインツはベルディがカスパルを知っていることに驚いていた。
そもそもカスパルはエルグランデの住人で、調査人として働いている。
時々別の世界に行ってはちゃんとした調査をして、報告書まで出すほど。
短時間の異世界調査ではここまで知り合いになることはないのでは? と。
それに対し、カスパルは2本目の煙草に火を付けて、煙を吐き出して言った。
――アルム達の世界は、時間の流れが大きく違う。
――故に自分が『貴族』の立場に立って数年過ごすことも可能なのだと。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル