and the story begins
《ゲート》の存在が確認されてから、およそ2時間ほど。
燦斗もエーミールも疲労困憊ながらに、侵略者《インベーダー》の討伐を進めた。
身体の疲労も大きいところへやってきてくれた猟兵、バルタン・ノーヴェ。
彼女の持つ兵器は侵略者《インベーダー》たちに多大な威力を誇り、一撃で粉砕する。
その勢いたるや、兵器の雨嵐。セクレト機関側のエージェントも驚くほどだった。
だが、そんな彼女のおかげで急速に事態は終わりを告げた。
『リヒ、ミル、ゲートはこっちで強制的に閉じておいたよ』
猟兵達、燦斗達の脳内に響く声がもうすぐ終わりだと告げる。
誰からの声なのか周囲を見渡しても、その声の主は何処にもいない。
セクレト機関側の司令官エルドレット・アーベントロートによる念話なのだそうだ。
それから数十分後、侵略者《インベーダー》は完全に鎮圧。
《ゲート》による影響がないか、またどの世界から開いたのかの現場検証が行われた。
「……おや?」
「あれ? あそこにいるのは……」
ふと、燦斗とエーミールの視界には侵略者《インベーダー》と同じく《ゲート》でやってきた人間の姿が映る。
黒いオールバックの青年はちらりと2人を見ると、顔を引きつらせていた。
「ジャックさん、いつこの世界に――」
エーミールが黒の男に近づこうとすると、再び脳内に声が響き渡る。
『あっ、ミル、待て! そいつは』
声が途中で寸断されると、黒の男――ジャックと呼ばれた男は突然燦斗とエーミールに攻撃を仕掛ける。
咄嗟に2人は一撃を防御したが、男は身軽な動きで2人を乗り越えて何処かへと逃げ出してしまった。
『あー、そうなるよね』
はぁ、とため息を付いた脳内に響くエルドレットの声。
エルドレットは事情を知っているが、今は話せることがないからとここで切り上げた。
ジャックに関しては、今はそっとしておいてあげてくれとのこと。
「それで納得がいくと思ったら大間違いですよ、父上」
『うーん、やっぱり? 事情説明したいけど、こればっかりはなぁ』
「それは世界に関わることだから?」
『そうだねぇ。……近く、デカい事が起きちゃうからねえ』
エルドレットが言うには、そう遠くない未来にすべての世界を巻き込みかねない事件が発生すると言う。
その事件に関しての全容が見えてこない今、燦斗達を呼び戻して事前に防ぎたかったそうだ。
『猟兵の皆さんにもお手伝いしてもらいながら、世界守っていかねぇとな』
「……だから、私達が呼ばれた?」
『猟兵さん達と繋がり強いの、リヒとミルとリアちゃんとメルじゃん?』
「あー……」
「なるほどねー……」
『あと、今回の《預言者》の力が猟兵さん必須って伝えてきたから!』
「そういうの最初に言おうか、父上」
何故燦斗とエーミールとエミーリアとメルヒオールが呼ばれたのか、納得がいった2人。
猟兵という存在が必要である以上、繋がりの持つ4人が戻ってきたのは必然だった。
故にこれからも猟兵の皆が困ることが無いようにサポートせよ、と彼らに指令が下る。
『すべての世界を護るために』
エルドレットが伝えた言葉に、嘘偽りはなく。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル