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Who am I?
「困りましたねえ」
「マジで困ったなァ……」
モルセーゴ強襲事件から約数日。
セクレト機関内の人員を総動員し、損傷と負傷者の治療が行われていた。
東方諸島の大都市ヴィル・アルミュールや西方諸島の大都市ヴィル・バルに始まり、
ファムの村や漁港マリネロ等、セクレト機関を支援する街や村から
人員が集まって復旧作業が続いていた。
【漁港マリネロに落ちてきた女性がいる】のだ。
異世界からの移動者ならば、直ちに司令官エルドレットに報告をしなければならない。
だが、エルドレットは依然として目覚めぬまま。
そのため、司令官補佐権限で燦斗とヴォルフが彼女を調べ続けていた。
「コントラ・ソールの所持はなし。異世界人であることは確定だ」
「となると、あとはどの世界から落ちてきたか……」
「エーリッヒ、そっちで調べてもらうことは?」
「可能です。とは言え私は離れられませんので、猟兵の皆さんにお願いすることになりそうですが」
「あー、それはしゃーなし。俺ら動けねェしな」
軽いやり取り後、彼女に対していくつかの質問を投げた燦斗。
しかし彼女は、どんな質問に対しても答えることがない。
……否、『答えられない』のだ。
「あの……あたしは、誰なんでしょうか?」
記憶喪失の女性には、何もわからない。
自分が今何に巻き込まれているのか。
自分が今何処にいて、何をされているのか。
名前も、出身も、何をしに来たのか、誰が家族で、誰が敵で、誰が味方なのかも。
彼女の脳には何も書かれていないのだ。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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