

secret mission
「……ありゃ、予定より早かったな」
司令官エルドレットは気づく。
自分が見ていた1つの未来が近づいてきたと。
《預言者》で見えていた、唯一確実に実現する未来が来たと。
黒木・摩那は証拠を揃えて、司令官エルドレットと対面する。
ジャック・アルファードが探し出す研究書籍――『ゲート構築と■■について』。
その研究書は過去、ベルトア・ウル・アビスリンクが提出した論文の内容であり、
侵略者《インベーダー》がこの世界に侵入する経路としても使われていた
《ゲート》に関しての情報が記載されているもの。
そして……何と言っても、ジャックが侵略者《インベーダー》として判断されないこと。
これらのいくつもの情報をエルドレットに渡して、彼女は彼からの返答を待った。
「……そっか、そこまで情報が渡ったんだね」
エルドレットの表情は……少し意外だ、という表情。
自分が見えていた未来とは少し違った、また別の未来へと到達したといった様子だ。
「今回だけ何故、猟兵を呼んだのか……お聞かせ願えますか?」
「ん、そうだね。……これは、誰にも内緒だよ?」
しー、と指を立てて、エルドレットは今回の件についての詳細を話し始めた。
『裏切り者がセクレト機関の中にいる』。
その一言目から始まった話は、組織への裏切り行為を行おうとする者がいるという未来が見えたのだそうだ。
しかしそれだけならば猟兵達を呼ぶまでには至らない。
では、何故猟兵達を呼ぶことになったのか?
「その裏切り者との戦いの際にコントラ・ソールを封じられる未来が見えたから、だね」
「コントラ・ソールというのは確か……」
「この世界の動植物全てが持つ力。……これを封じられると、俺たちはキミ達以下に成り下がるのさ」
「だから、その力を持たない猟兵が呼び出された?」
「ジャック君だけでも良かったけど、彼だけではどうしても無理だからね」
小さく笑ったエルドレット。しかしその声は真剣そのものだ。
ジャックが書籍を探す理由も、その未来を食い止めるための予防策であり……
秘密裏に行わなければ感づかれてしまう故に、今まで黙っていたという。
「だから、申し訳ないけど……リヒやミルたちにも、このことを伝えるのは厳禁だ」
その一言を告げるときのエルドレットは、正しく司令官の姿となっていた。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル