same person?
「……複数の父、ですか」
「はい。例えば、時間軸が違ったり、別人格だったり」
「うーん、面白い。それが本当だったら面白いのですが……」
情報を精査する黒木・摩那に対し、燦斗はふむ、と考える。
摩那が言うにはモルセーゴによる襲撃事件のゲート制作の犯人がエルドレットであることから、
『複数のエルドレット』がいるのではないかと考えていた。
もっと言うならば、過去や未来、平行世界線のエルドレットがいるのではないか、と。
しかし、燦斗はそれを否定した。否定せざるを得ない理由があるからだ。
「父の身体は機械の身体。現在のエルグランデから離れると、一切動けなくなるんですよ」
「ということは……」
「はい。平行世界線説、時間軸説は成り立たないものと考えたほうがいいでしょう」
「なるほど……」
燦斗曰く、自分やエーミール等の兄弟達と同行するならば有り得る話ではあると言う。
しかし摩那も、そして他の猟兵達も彼らと行動するエルドレットは見ていない。
そのため摩那が提唱した説は成り立たず、ゲート情報は誰かが改竄していると見ていいそうだ。
また、摩那はもう1つ気になる情報について彼に話を聞いていた。
それが『ゲラルト・フィリップ・フュッテラーが更迭された』ことについてだ。
「そういえば、ゲラルトさんのことですが……更迭された理由って?」
「ああ、それなんですが……」
燦斗がエルドレットから話を聞いた所、『このままではいけない』という理由でゲラルトは更迭された。
何故そんな軽い理由なのか。それについては全くわかっていないそうで。
「彼は『同志のために私は動いている』と言っていましたが……」
ゲラルトの言葉を信じるならば、彼を動かす誰かが後ろに存在している。
もしそれをエルドレットが知っているのだとしたら……?
「……いったい、何がどうなっているんでしょうねえ……」
小さく呟いた燦斗の言葉は、コンピューターを前にすぐに消えた。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル