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司令官室の大コンピューターを前に、ヴォルフエミーリアはキーボードを叩く。

侵略者《インベーダー》・モルセーゴによる強襲で被害がどのぐらいあったか。

また、その強襲によって研究員・戦闘員に損傷があったかどうかを調べていた。

「流石に数が多すぎて被害がデカいな……」

「戦闘員が出払ってる隙を突くなんて、卑怯ですの~。むぐぐ~」

「ともかく、もう少し被害を抑えねえとな。リアちゃん、ドレットの奴は?」

​「お父様は……」

エミーリアは首を横に振る。

エルドレットは、まだ眠りについている。

ただしそれは脳を休めるためではなく、【彼を出してはならない】と意見が出ているためだ。

 

彼にはある疑いがかけられており、表立って立たせるのは今は危険だという情報が出ている。

侵略者《インベーダー》・モルセーゴを呼び寄せるゲートを開いた主犯だ、と。

「……まあ、十中八九濡れ衣だろうよ。アイツがそんな事するやつじゃないってのはわかるだろ?」

「…………」

小さく、けれど不安そうに首を縦に振るエミーリアの目には涙が浮かんでいる。

父たる存在、自分にとっては育ての親のエルドレットがこんなことをするはずがない。

この世界を貶めようとすることなんて、ありえないと。

「信じて待ってやろうや。それが、俺たちに出来る最良の仕事だ」

​「……はいですの」

そうして2人が再び調査を続けていると、突如として響き渡る大きな音。

昔懐かしのあのダイヤルアップの音が大音量で2人の耳に届いた。

「なんだァ!?」

「あわわ~!? なんですの~!?」

慌てる2人はすぐさま情報収集のため、機関内に設置された監視カメラをチェック。

すると、エーミールと共に行動していた二本木・アロがなにやら不思議な絡繰と共に行動している。

巨大な音は絡繰――戦闘人形の『ココペリ様』が鳴らしているようだ。

「おいエーミールゥ!! お前、おま、何してんだァ!!」

流石に訳の分からない状況にヴォルフがキレた。

事前連絡もなく、唐突な大音量は機関の機械類すべてがぶっ飛ぶぞと怒りを示しながら。

しかしこれはモルセーゴを蹴散らし、洗脳を解くための手段。

彼らは群れから離れることで洗脳が解除され、元通りになるという。

現に彼女が通り過ぎた後、モルセーゴは音で混乱して散り散りになり

その拍子に混乱が解けた様子が見て取れたのだそうだ。

『なので、ええ。アロさんの策は完璧です!』

「だとしても事前に言えっつーの! ドレットに知られたらお前の権限剥奪だぞ!?」

『もう既に司令官補佐からオルドヌングの団員に落ちてるので問題なし!!!』

「そういうことじゃねェ!!!」

ぎゃいぎゃいと怒りをぶつけるヴォルフと、なあなあで躱すエーミール。

​その後ろでは大音量の代償としてアロが大爆笑していた……。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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