Lord
マリネロの港町にて、情報収集が行われた。
街の人々のコントラ・ソールによって救出されたことが判明した。
街の人々曰く、アルムはかなりの高さに作られたゲートから落ちてきたようで、
何もしないままに落ちるのは危険だと判断しての救助活動だったそうだ。
摩那が空を飛んで調査してみれば、
高高度の位置には周囲に存在しない花の花粉が存在している。
風の流れがよく変わるせいで、ずっとその場に留まり続けているようだ。
このおかげでアルムがゲートを通ってきたことがわかるのだが……。
本来ならばゲートを作った人間がわかるはずなのに、
その情報が抹消されていることも判明している。
この情報はセクレト機関の人間でなければわからないため、
後ほど燦斗等の機関メンバーに情報が渡されることになった。
調査を終えた摩那が港町に戻ると、長身の男と目があった。
男は摩那と視線を合わせると、一瞬だけ後退りしたが摩那によって捕らえられた。
「逃げるということは、やましいことでもあるんですか?」
「い、いや、そう言うわけではないのだ。レディ」
「じゃあ、どういう訳ですか?」
「それはー……」
男が何か言おうとしたが、しどろもどろで答えることが出来ていない。
それどころか、適当なことを言って逃げようとする様子がひしひしと伝わってきた。
彼は敵か、あるいは情報を何かしら持ち合わせているか。
何にせよセクレト機関に引き渡す必要があったため、拘束力を強めていた。
「フィ、フィリップ卿!? なんでアンタがここに!?」
そんな折に聞こえてきたのはジャックの驚愕する様子の声。
捕まえた男のことを知っている彼は、男がジャックの世界の貴族であると教えてくれた。
高名な貴族であり、ジャックも家柄で話ぐらいはしたことがある。
……本来ならこの世界にいる人物ではないことも、よく知っているのだが……。
「ジャック殿へるぷー! へるぷみー!」
「えぇ……めっちゃ怪しすぎるんだけど……?」
「どうします? 金宮さんに引き渡そうと思ってますが……」
「ちょっ、エーリッヒ殿は勘弁ッ! エーリッヒ殿は勘弁ッ!!!」
何故か、ゲラルトは燦斗の本名である『エーリッヒ』の名を知っている。
エルグランデの住人でなければ知っているはずのない、燦斗の本名。
じゃあなおさら引き渡さない理由はないと、彼はそのまま様子を見に来た燦斗に引き渡されていった……。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル