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looking into the abyss
「あれまあ、俺の書籍の名前バラしちゃったんだ?」
そう笑った白衣の男。
今日も何処かの空間で、猟兵達の動向を探っている。
……そう、この白衣の男こそがベルトア・ウル・アビスリンク。
『箱庭研究』の事故で箱庭の世界に閉じ込められた、研究者の1人。
ジャック・アルファードを派遣し、セクレト機関に助力を与えている者。
彼の目的は依然として不明。
しかし協力者という立ち位置に近いようで、彼が侵略者《インベーダー》を送り込んだわけではないようだ。
……それでもまだ、彼には様々な謎が残されているが。
「あの書籍、いずれタイトルがバレるとは思ってたけど……ルナールがバラしちゃったか」
「司令官はこの事も想定済みだったりするのかね? 違ったらルナールに申し訳なさしか無いんだが」
からからと笑う中、彼はいくつも並んでいるモニターの中の1つに目を向ける。
自分が管理することになってしまった『箱庭世界』、その地上を見張っているカメラの先。
何の変哲もない、平和豊かな城下町の光景が映し出されている。
その城下町では王女の生誕を祝うお祭りが行われようとしているようだ。
幟には「アルム様の生誕を祝して」という文字が刻まれている。
「さて、ここからどう動こうかねぇ。猟兵さん達をフォローする方法か……」
椅子の背もたれに身体を預け、思案するベルトア。
けれど彼の考えがまとまることは、一切ない。
「……ん?」
あるモニターに表示された異常事態を知らせるマーク。
それは、セクレト機関に侵略者《インベーダー》が訪れたという情報を示していた。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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