




homecoming
「なーんか面倒事起きてるみたいだなあ」
司令官システムの中で、エルドレットが呟く。
マリネロの街より北に進んだドーム型都市……戦闘専門都市【ヴィル・バル】。
そこで新たな事件が起こったようだ。
前回の事件はコントラ・ソールの発現による多数の被害を食い止めるものだったが、
今回の事件はその真逆の事件。
つまり、コントラ・ソールが使えなくなると事件が発生していた。
その事件が発覚したのは、ヴィル・バルの住人からの通報。
それまでは一切システム側も気づくことはなかった。
アルミュール海域へと向かったスヴェンもヴィル・バルの異常は知らなかったという。
『おかしいな。オレが外に出たときはそんな異常は確認できなかったが』
「スヴェン殿の探知は間違っていない。どうやら、外から確認できないようになっているな」
司令官システムの中でもヴィル・バルの担当をしているアードラー・サージュ。
彼曰く、ヴィル・バルの内部の者がセクレト機関に連絡を入れなければ、
司令官システムでも探知が効かず、外からの探知も出来ないようになっているようだ。
「アードラー、これってもしかしてお前さんの研究が関わってるか?」
ナターシャがアードラーに問いかける。
というのも、アードラーは元々コントラ・ソールを研究していた研究者。
娘であるクレーエのコントラ・ソールを発現させないように施したこともあるため、
その研究が流用されている可能性を示唆していた。
「……どうだろう。私のあの研究はクレーエ1人にしか使えないもののはずだが」
「アドがこっちに来たあとに誰かが大規模に改変したとかは考えられる?」
「……ふむ……」
色々と考え込んだアードラー。エルドレットのあげた可能性も含めて考えるが、
どうやっても、大多数の人間のコントラ・ソールを失わせる方法は大掛かりになって難しいそうだ。
「少なくとも、大型ゲートを作れなければヴィル・バル住民全員は難しいな」
「そうかぁ……ってことは俺やスーじゃないと無理?」
「そうなるか。あとは、ソール物質のみを選んで吸収する方法を作れば可能だ」
「……あえ? それって……」
ふと、エルドレットはそんなコントラ・ソールがあったことを思い出す。
今現在この場にいない、司令官システムのメンバーの一人が持っているコントラ・ソール。
彼が持っている《蒐集者《コレクター》》という力がそれに値すると。
「……ふむ。では私から1つ提案があるのだが」
そう言うとアードラーはエルドレット、ナターシャ、スヴェンにある提案を上げた。
その2人を帰省させてみよう、と。
「彼らってヴィル・バルが出身地だっけ?」
「そうだが?」
思わずすっとぼけた言葉をぶん投げてしまったエルドレット。
後に確かに2人がヴィル・バル出身だったことを確認できたため、帰省許可が出たそうな。


これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル