Commander
「今、どんな状況だ?」
眠りについた頭の中で、俺は複数の『俺』に語りかける。
猟兵達のおかげで問題なしの言葉が多く流れてくる中で、1つの朗報を聞く。
その一言だけでも、俺の強張った精神は和らいだ。
あの2人が守られたなら、今後のセクレト機関の動きは多少変わる。
まあ、あの子達なら護衛に赴かなくとも大丈夫だろうとは思っていたが。
……とは言え、油断はできない。
『俺』の判断が鈍る前に、次の対策を立てる必要がある。
次に裏切り者が動き出す前に、予測を立てなければならない。
俺は後手に回るのは嫌いなんでな。先手を打って、食い止めてみせる。
「――《預言者《プロフェータ》》よ、応えろ」
我が息子、エーリッヒ・アーベントロートの未来を。
同胞たるベルトア・ウル・アビスリンクの協力者の未来を。
そして、協力してくれている猟兵の皆の未来を。
世界の未来を、1つ残さず俺に見せてくれ。
「……マジか」
俺のつぶやきに対し、複数の『俺』が反応を示す。
大半がその未来へ到達することは危険すぎる、という理由が多い。
……まあ確かに、俺でもそれは危険だと思ったけどね?
俺が見た未来。
この世界における力――コントラ・ソールを研究していた男と猟兵の皆が出会う場面。
その男の名は、エレティック・リュゼ・ルナール。
コントラ・ソールを呪術だと提唱した、狡猾の異端者。
今何処にいるのかは、俺とある研究者しか知らないんだけど……。
多分、《アイツ》が会いに行けっていうんだろうなぁ。
『私は却下します。エレティック・リュゼ・ルナールと猟兵を会わせるなんて』
『ルナール教授は確かに有識者。けれど、彼は危険だ』
『コントラ・ソールを呪われた術と提唱した者、彼は何を考えてるか……』
複数の『俺』がどんどん、意見を上げていく。
否定的な意見が多いから、じゃあやめとこうか、って思ったよ。
けれど……それが許されなかった。
西方諸島の漁港【マリネロ】からの連絡が入ったせいで。
教授、マリネロの近くに隠れ住んでるんだよなぁ……。
「……こりゃあ、教授に鉢合わせするパターンかなぁ」
そんな未来が訪れることもあるさ。
……なんて言ったら、『俺』から怒られちった。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル