


Causes of pain
セクレト機関の懲罰房。
薄暗い部屋の中、エーミールとメルヒオールは『腹減った』を繰り返す。
自由に食事を摂ることが出来ない今、彼らは定期的な食事というのがとてもつらいようで。
彼女はジャンクフードを彼らの前で食べながら、情報提供を待つ。
飢えてる人の前で食べるのは少々心苦しかったが、これも情報のためだ。
「ほらほら~めるめる~」
「あ~姐さん、もうちょっとこっちこっち」
「駄目ですの~」
「ああ~~~~~」
何とも極悪卑劣なことをやり始めたエミーリア。
流石にこのままだと本当に餓死しかねないため、エーミールは情報を落とすことに。
摩那が詳しく調べると、エーミールには『痛みの呪詛』が埋め込まれている事が判明。
しかもその呪詛はソール物質で出来ており、一体化しているため記憶も保持しているようだ。
もっと言えば彼の憎悪に反応するように調整されており、外すことも難しい。
現状は《呪術師《マーディサオン》》の使用者による解呪のみしか受け付けておらず、
かなり厄介な状況となっていた。
「でも、何故エミーリアさんにまで反応するんですか?」
摩那のもっともな疑問がエーミールに突き刺さる。
確かに、とエーミールも考え込む様子だが……ちょっと待て、とあることを思い出す。
コピーチルドレン研究。
それはエーミール、エミーリア、メルヒオールが受けた研究だが……。
実は彼らの力の大元を持つ燦斗が作り出したのは、エーミールとメルヒオールと以下5名。
エミーリアは実際はエルドレットが研究を借りて作り出した子。
そのため、『エルドレットが作った』という小さな部分がエーミールの呪詛に引っかかり、
彼女への憎悪を増大させているというのが頭痛の原因となっているようだ。
とはいえ、ほんの小さな部分を増大させるほどの呪詛。
これを行ったとして、誰が得するのか?
「小さかった憎悪を大きくした結果、エルドレットさんを機能不全に陥れようとした……」
摩那の言葉に、エーミールはハッと何かを思い出そうとする。
ソール物質によって作られた呪詛が記憶を阻害する前にと、紙とペンを借りて時系列を書き出しながら。
フェルゼンがエーミールに呪詛を付けたのは、このタイミングだと判明した。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル