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at the worst case

「……ああ、ダメだ。俺のコントラ・ソールも動かなくなった」

 

右手を軽く何度か握ったり開いたりして、ライアーは自分の身体の様子を確認する。

響納・リズと合流した後、ヴィル・バルへと入った途端に使えなくなったようだ。

それと同時、クレーエが少しふらついてる所をリズは見逃さなかった。

クレーエ・サージュはコントラ・ソールを持たない少女。

故に彼女には『リンクシステム』が組まれており、それでなんとか生きながらえている。

もし、彼女からソール物質がなくなってしまえば死に至るのはリズも知っての通り。

――頭に浮かんだ彼も似たような状況なのだということが、どうしても離れない。

「でも、フェルゼン様が関わっているとしたらどちらに……?」

リズはこのヴィル・バルにやってくるのは初めて。

故に、何処へ向かえば良いのかはわからない。

ライアーも同じように何処に行けば良いのかはわかっていなかった。

けれど、ジャックが連れていたモルセーゴだけは違った。

リズのユーベルコードによって癒やされ、一時的に立ち入れるようになったからか。

それとも、元々の嗅覚が鋭いからか。

モルセーゴはぎぃぎぃと鳴いて、ある場所を示した。

「向こうって、闘技場ですよね。ライアーさん」

「だな。確かにあのへんは何かありそうだ」

​「では、そちらにクレーエ様を連れていけば何かわかるかもしれませんね?」

​「行ってみよう。……あ、ジャックは大丈夫か?」

「無"理"そ"う"!!!!!!!」

モルセーゴ同様、リズに治療されてマスクをした状態でついてきたジャック。

闘技場に向かうにつれて彼の状態は治療さえも効かず、下手すると死ぬとまで言われた。

​そのため彼にはヴィル・バルから離れてもらい、何かあったときに手伝ってもらうことになった。

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Offering a prayer to the depths of the abyss

砂埃が舞い上がり、視界が不良の中。

1人の男が闘技場の真ん中に立っていた。

リズはその姿を忘れもしない。

その男に向けて掛ける言葉があるからこそ、今日、ここに来たのだから。

「――フェルゼン様!」

フェルゼン・ガグ・ヴェレット

世界の敵『リベリオン・エネミー』に認定された男。

夏休みという概念を持つリズと共に、マリネロの街を共に歩いた男

……おや。ここが知られるとは

歪な笑みを浮かべて、濁りきった三色の瞳を向けて。

今も彼はリズの敵であると示す。

例えどんなに声をかけられようと戻ることはなく。

例えどんなに慕われようと壁を作り受け入れることはない。

それを、三色の瞳が無言で突きつけていた。

だけど、リズも折れることはなかった。

いつまでも彼を慕い続けていること。

彼の身体を心配していること。

敵だと言われようと、それを曲げることはないことをはっきりと伝える。

……それは、

一歩、二歩と近づいてきたフェルゼン。

しかし彼の身体は唐突に崩れ落ちて、膝をつく。

その様相に慌てたリズとクレーエが彼の身体を支え、楽な姿勢にしてあげようと彼を横たわらせる。

何故フェルゼンがそんな状態になってしまったのか。

それに気づいたのは、クレーエ1人だった。

「……アルムさん、何かしました?」

​「えっ……?」

アルムとフェルゼンが距離を縮めたことで、何らかの影響がフェルゼンに及んだ。

クレーエは瞬時にそれを判別できたのだ。

コントラ・ソールとは違う何かの力が、フェルゼンに流れていると。

「と、ともかく。今はフェルゼン様を治してみます!」

リズがユーベルコードを使い、フェルゼンの現在の症状を治療。

柔らかに降り注ぐ光がフェルゼンを包みこんだかと思うと、やがて彼は目を覚ます。

そして、彼は鬼気迫る表情でただ一言だけ告げるのだ。

「――私の中の模倣者《ミメーシス》に惑わされるな……!!」

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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