top of page



Agent of Vengeance
何処かの森の中。
エーミールとメルヒオールは焚き火を囲み、大空に浮かぶ黒穴を見上げていた。
彼らは『誰か』に命じられ、セクレト機関を狙う。
だが、今はまだ動くときではないからと、何処かの森で姿を隠している。
「……エミさん」
「なんでしょう?」
そんな中で、メルヒオールが焚き火の向こうのエーミールに問いかける。
『どうしてそんなに復讐を望むのか』と。
エーミールのエルドレットに対する怒りは相当のものだ。
だけど、それは『エーミール本人が被害を受けたから』ではない。
エルドレットが実の息子である燦斗を捨てた。
その事実に基づいて、彼はただ親愛なる兄のために復讐を決行するつもりだ。
兄が出来ないというのなら、弟である自分がやるのだ、と。
「そうかぁ……。ホンマにやるんやね?」
「ええ、ええ。もちろん。私の性格をあなたはご存知でしょう?」
「……ま、せやね。エミさんそういうとこあるから」
「でしょう?」
はあ、とため息をついてメルヒオールは焚き火の中に枯れ枝を投げ入れる。
パチンッと爆ぜる音が響いて、火が上がる音だけが辺りを埋め尽くしていった。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
bottom of page