wide open hole
「…………まずいな」
とある場所のモニターを見ながら、白衣の男ベルトア・ウル・アビスリンクが呟く。
様々な数値を見比べて、頭を抑えつつ色々と思考を巡らせている。
エルグランデという世界にまた新たな《ゲート》が誕生した。
それはベルトアの方でも確認が出来ているようだ。
だが、そのせいで彼はある事象に頭を悩ませていた。
「ベルトア~、準備出来たよ~」
「ん、おお。早いな」
「そう? ベルトアが悩んでる間には準備終わったよ」
「うわ、俺そんなに考え込んでたか」
いくつかの手提げ袋を携えて、青髪の男アマベルと黒髪の男レティシエルがベルトアに近づいてくる。
彼らはベルトアが頭を悩ませている間に準備を済ませていたようだ。
アマベルとレティシエルの荷物をしっかりと確認し、持ち込み不可がないかをチェックするベルトア。
しかしその表情はあまりにも晴れない。不安そうな顔をしていた。
「……ベルトア、やっぱり行っちゃダメ?」
「ん……いや、行って良いんだ。けど、今から行く場所で面倒事が起きていてな……」
「どんな面倒事? 僕らでよければ解決しに行くけど」
「お前らで解決できるならとっくの昔にそうしてるんだよなぁ」
無理矢理に笑顔を貼り付けるベルトア。
彼が頭を悩ませていた事象。
それはこれからエルグランデに向かう2人にも関係があるようだ。
「ああ、そうだ2人とも」
「なに?」
「なーにー?」
キーボードを叩いて、機械的にゲートを調節しているベルトアは2人に声をかける。
ベルトアは気をつけて、無事に帰ってこい、等々言いたいことは色々あったようだ。
けれどベルトアはそれらをすべて飲み込んで、ある一言を彼らに残した。
『辿り着いたらすぐに空を見て俺に連絡しろ』と。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル