


Visit the past
「侵略者《インベーダー》・ミメーシスなあ……」
「……あれは、どう見てもこの星の者じゃないな。断言できる」
「ああ、やっぱり? スーがそう言うなら皆にもそう言って良さそう」
司令官システムの水底にて、エルドレットとスヴェンが情報交換を行う。
あれだこれだと決定づけられる内容ではないのだが、それでも。
侵略者《インベーダー》・ミメーシス。
フェルゼン・ガグ・ヴェレットの肉体を得て『模倣』した存在。
どのようにしてフェルゼンの身体を得たのか。
またどのようにしてフェルゼンと接触したのか。
それらの情報がまだ何処にもなく。
そこでスヴェンはコントラ・ソール《過去視《クロノスサイト》》の使用を提案した。
《過去視《クロノスサイト》》はその名前の通り、過去を見る力。
フェルゼンの過去を見て、彼がいつミメーシスと接触したのかを見ればいいじゃないかと。
「エルドレット、《過去視《クロノスサイト》の使用許可は?」
「一応アレン君からOKは出てる……けど……」
歯切れの悪いエルドレットの返答。
スヴェンと目を合わせようとすることなく、別の方向を向いている。
……それはまるで、目の前の彼には知られたくないことがある、と言いたげに。
「? だったら使えばいいじゃないか」
「いや、そのぉ……」
またも歯切れの悪い返答。
その直後にエルドレットは『いつを見ればいいかわからない』と答えた。
《過去視《クロノスサイト》》の使い方はさほど難しくない。
過去を見たい対象の、過ごした年齢と時間を指定して見に行くだけ。
だがエルドレットはフェルゼンの過去を見るとしても、
どの年齢のいつの月を見たら良いのかがわからないと言うのだ。
フェルゼンは御年50歳。
生まれた時から今までを見るとして、50年分。
そこからさらに1年=12ヶ月に細分化すると膨大な時間を旅することになってしまうのだ。
「……ああ、そうか。年齢を一つ一つ重ねて見るわけにはいかんか」
「そう、そうだよ。1年毎に見てったらシステムへの負担が凄いって!」
「ふむ、確かにそれもそうなるか」
エルドレットの渾身の説得により、スヴェンは納得した。
どんなに素晴らしい司令官システムでも、大量の負担がかかれば電源が落ちるのは間違いない。
そう言った部分では普通のコンピュータとなんら変わりないのだから。
……人の脳を大量に使っている、という点では普通ではないが。
「となると、どうしようか。我が家にもう一度戻るか……?」
どうしたもんかとスヴェンがもう一度考える。
過去を見るにしても、アンカーとなりうる年齢がわからなければ意味がない。
その手がかりとなりうる何かを探さなければ、この先には進めないような気がした。
そんな中、エルドレットはスヴェンから顔を背けて。
「ごめん」
と、小さく呟いた。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル