


The person who erased
エルドレット・アーベントロートの私室にて。
その結果、彼の記憶にはいろいろな情報が詰め込まれていた事が判明。
スヴェンは子供達を虐待していたことがあること。
それは危険薬物によって引き起こされた不安定な精神状態で起きたこと。
ミメーシスとの通信時は状態が不明だったこと。
ミメーシスという存在が2度目の侵攻であること。
スヴェンの記憶を消したのは、伴侶であるザビーネであること。
『私が表に出ると、色々と大変なのよね』
「うん、まあ。ナタもすげー困った様子でした」
『お義兄さんにはバレてたのになぁ』
あれやこれやと話を繰り返し、エルドレットとザビーネの間に情報間違いが起きてないかを確認していく。
ここで何らかの齟齬が起きていれば今後の活動にも響いてしまうからだ。
「でも、どうしてスヴェン様の記憶を消したのですか?」
そこでリズは思わず聞いてしまう。
ザビーネがスヴェンの記憶を消すのは、よほどの理由があってのことだろうと。
そうでもなければ、システムの奥にいるなんてよっぽどのことだと。
『私ね、スヴェンは思い出したら壊れちゃうんじゃないかって思ってるの』
「壊れる……?」
『自分がやったことの重大さに気づいて、心が耐えられないんじゃないかな、って』
「あ……」
ミメーシスを呼ぶことになってしまった原因。
それはスヴェンがミテラ・ミメーシスと呼ばれる存在と通信を行い、呼んでしまったことだ。
この記憶は現在スヴェンからも失われており、日記で読んだ程度の知識しかない。
だが、もしスヴェンが全てを思い出してしまったら。
『自分が全ての原因』だと気づいてしまったら。
もしかしたら、自害してしまうのではないかと不安になってしまったようだ。
故に、ザビーネはコントラ・ソール《忘却《オルビド》》を使い。
スヴェン・ロウ・ヴェレットの記憶を消した。
彼を守るため。彼の心を守るために。
『……身勝手な女よね、私って』
そう呟く文章を打ち込んだ後、ザビーネは一旦その場を去った。
呼ばれればいつでも来る。そう一言残して。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル