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ラウンド図書館

researcher

――コントラ・ソールの消滅。

それはすなわち、エルグランデという世界の根幹を揺るがす危機的状況。

 

この世界に存在する全ての動植物には等しく力が与えられており、

それを使って生きる術を身に着けている。

だからこそ、この世界出身でもあるユーノ・フォンベルジュにとっても死活問題だった。

特に彼の生活環境で芽生えたコントラ・ソール《生活魔法》は

彼の暮らしを豊かにするもの。

それが使えなくなれば、どんな生活が待っていることやら。

「世界から失われる……それだけは、絶対に止めなくちゃ」

その未来を止めるために、彼はセクレト機関のありとあらゆる情報を探し回った。

セクレト機関は何も全てが機械によって管理されているわけではない。

古い文献、研究者の直筆メモなどはいくつかの研究棟にある書庫に収められている。

ユーノは過去に同例の事件が無かったかを探るべく、第二研究棟の書庫へと向かうのだが……。

「ま、迷った……?」

セクレト機関の本部というのは、縦にも横にもデカい。

故に来たばかりのユーノはまだ地図把握も出来ておらず、困り果てていた。

そんなときに通りがかったのが、高位研究者のフェルゼン・ガグ・ヴェレット

「おや、キミは」

​「こんにちは。ええと……確か、フェルゼン様」

​「はは、様と来たか。いや、私のことは普通に呼んでくれて構わないよ」

少し照れくさそうに答えたフェルゼン。

その手にはいくつかの書類が纏められたファイルを所持しており、書庫へと戻す最中だったようだ。

実際、ファイルからはみ出している研究書のサインの中にはエーリッヒ――燦斗の本名もあった。

「研究熱心なんですね」

「この歳になっても、好奇心は尽きぬものでね。とは言え、コンピューターは目が痛くなるものだ……」

大きくため息をついたフェルゼン。その様子は、まるでおっさんっぽい。

気になったユーノがフェルゼンに年齢を問うと、既に50は超えてるのだそうだ。

研究で作り出した若作りの薬を自らに打ち、実験を兼ねているという。

​「詳しく聞きたいならば、後日正式に話をしよう。研究成果を話すのも、たまには悪くはない」

そう笑いながら、フェルゼンはユーノを目的の書庫へと連れていく。

彼の穏やかな表情が、ユーノの心に少し印象的に残っていた。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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