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「お待たせしマシタ、エミーリア殿、ルナール殿!」
「バルタンさん!」
「救援か!? 助かった!!」
マリネロの港へ駆けつけたバルタン・ノーヴェ。
エミーリアの嬉しそうな声と、ルナールの焦るような声が同時に上がる。
というのもクラーケンは一度倒されたが、治療型コントラ・ソールによって復活している。
そのため、戦闘員の消耗などを考えるとどう考えても人手が足りていない。
そこへ駆けつけた救援というのは、なんとも心強いものだ。
「しかしまあ、なんと大きい。捕獲できれば良い食糧になりそうデスガ……」
「やめとけぇ!? 絶対食あたり起こすぞ、アレ!」
今回もツッコミが絶えないルナール。
クラーケンを食糧にする考えが2度目なものだから、2度目も同じように驚いていた。
「丸焼きにしたら美味しそうですの……」
「エミーリア嬢!!??」
なお、エミーリアは疲れ果てているのだろうか、同調し始めていた。
長らく戦闘行為に携わっていなかったのもあって、体力が少しずつ足りなくなっている様子。
とは言え、猟兵の持つユーベルコードというのは凄まじい。
コントラ・ソールではなし得ない、精神への攻撃が出来るのだから。
バルタンはまさに今、赤い海賊となって大津波を作り出し、クラーケンのやる気を削いでいた。
***
それから、クラーケンが海の底へ落ちた後。
エルドレットにどうするかと指示を仰いだバルタン。
ところが、司令官システム側でも予想出来ない状況が起こっており、エルドレットの返答が誤字だらけだった。
というのも、最重要容疑者でもあるフェルゼンが姿を消したそうだ。
本来であれば司令官システムに必ず捕捉されるはずなのに、だ。
「お父様達から逃げる方法……」
「システム側が捕捉出来ない、捕捉させないようにする方法……か」
エミーリアもルナールも色々と考えるが、何も思い浮かばない。
しかしバルタンはここに来たときから、何やら違和感を感じ取っていた。
――薄幕の向こうから、誰かが見ている気がすると。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル