guided princess
「あ、あの」
「怪我なし、体調よし、万全よし!」
ヴィル・アルミュールの街の中。
ジャックは駆けつけてくれた空桐・清導と共にアルムと合流する。
突如いなくなった彼女に対して体調面を心配していたが、特に問題はなさそうだ。
「よかったな、ジャック。彼女が無事でさ」
「ホントだよ……。ありがとな、清導」
「気にするなって。人を探すのは慣れてるからさ」
ため息をついて、彼女の無事を祝ったのもつかの間。
まだ、彼女の『やるべきこと』は見つかっていない。
それを告げたのは、調査人のロルフ。
今ここで彼女と離れても、問題解決に至らなければ意味がないのだ。
「けど、どないするん? 何か情報ある?」
「そうだな……街って見て回れたのか?」
「そ、それが……この街、広くて私達じゃ全然回れそうになくって!」
「せやねん! しかも小学部とかその辺も入れへんねんて!」
アルムと一緒に街に文句を言っているシェルム。
全て回らなければ情報もないのだが、
現在区画毎に検問所が設置されており別区画に向かうことは出来ない。
これも子供達の行方不明事件が起こった影響でもあるのだろう。
それならとひらめいた清導は、ユーベルコードによって呼び出したロボット達を使おうと提案した。
「じゃあ、オレのロボット達が見て回ろうか。その映像を何処かで見たいけど……」
「それなら、いい場所があるぜ」
そう言ってジャックが案内したのは……アビスリンク家。
ベルトア・ウル・アビスリンクの実家。
ここならばセクレト機関と繋がりを持ち、なおかつベルトアにも連絡が行く。
更に何も知らない者からすれば空き家でしかなく、興味は向かない。
『何があるかを知っている者』しか近づくことがないため、隠れ場所としては最適なのだ。
ジャックは執事マルクスと合流し、ベルトアの使っていた研究室を借りる。
ベルトア自身、言語学をメインに取り扱っていたため、書籍が多く存在していた。
とは言え、今回はこの書籍がメインではないので割愛。
「……あれ?」
ふと、清導はヴィル・アルミュールの街並みに違和感を見つける。
ほんの少しジャックと共に歩いただけだが、確かな違和感。
自分が先程通った道が、街の外観に馴染むように塞がれているのだ。
「さっきのこの場所、オレとジャックが通った……?」
「……おかしいですね。この街は学業以外のことは廃しているのに」
「えっ。じゃあ、これって……」
「…………。地図をこちらにご用意しました、僕がどの場所か確認します」
マルクスが用意してくれた地図と、清導のロボットが見つけた街の違和感。
それらを丁寧に潰していくと、ヴィル・アルミュールの街並みは一瞬にして迷路となる。
――誰かをアビスリンク家とヴェレット家へ導く迷路へ。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル