God's Perspective
「珍しいねえ。他人嫌いのアイツが他者と接触を図るとは!」
「猟兵……っつったか。エーリッヒとエーミールが連れてきた奴ら」
「なるほどね……確かにそいつらなら『裏切り者』を通ることはないか!」
からからと笑う白衣の男。
彼はモニターを前に何かを見ているようだが、何を見ているかはわからない。
ただ、猟兵達の動きは彼に筒抜けのようだ。燦斗とエーミールのことも知っている様子。
「しかし、あの人はもう気づいてるのかね。誰が『裏切り者』なのか」
「せっかく《預言者《プロフェータ》》があるんだから、そこまで見ればいいのにな」
少しずつ、自分の考えをまとめていく白衣の男。
コントラ・ソール《預言者《プロフェータ》》。
その力で未来を読めることさえも知ってるようだが、あることに気づく。
それは「『裏切り者』を何故断定出来ないのか」という点。
これまでに未来を見た人物は全て確定の未来を見てきたのに、何故今回は見ることが出来ないのか。
猟兵という存在が出てきたから見ることができなくなったのか?
それとも何かの要因が引っかかって断定が出来ないのか?
ありとあらゆる推論を立てて、何かに気づいた男は小さく呟く。
「……『これから作られるから』?」
「いや、それは……あり得るのか。アイツが俺の手紙を読んだ後の干渉って時点で……」
彼の言う『アイツ』とは、誰なのかははっきりとはわからない。
けれど確かなことは、彼と繋がりがあるということだけ。
「そうなると……この俺でさえも、物語の製作者ってことか」
ニヤリと笑みを浮かべた白衣の男。
自分自身が何なのかを頭の中で想像した上で、答えを導く。
『これから作られる物語』。
もしそれが本当だとすれば、白衣の男の役割は……。
「……もう少し、眺めてみるとしようか」
「アマベルとレティシエルが猟兵《おもちゃ》の存在に気づく前に……」
何かに気づいた男は再びモニターに向き直り、何かを見る。
そのモニターに映し出されているのは、先程まで猟兵達が立っていたマリネロの港。
そして、ライトブルーの髪を持つ男の姿だった。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル