


Finally on the move
「……どうやら、彼女が動き出したようだ」
司令官システムの奥底でアステリが何かに感づいた。
普段起きることがないからか、余計に敏感になっているようだ。
「はへ? 伯父様、誰のこと言ってるの??」
マリアネラはのんきに言葉を返す。
父の兄であるアステリに彼女と言われても、誰のことを指してるのかすらもわからなかった。
司令官システムにいる女性と言ったら、観測できる限りでは現在はマリアネラのみ。
他にも女性はシステム内部にいるが、少なくとも猟兵達に声を届けたことがあるのは彼女だけだ。
だというのに、アステリはマリアネラではない、別の誰かのことを指している。
その『誰か』が動き出したと言っているが……。
「伯父様の言う事、いまいちよくわかんないんだよね。いつも」
「えっ。スーよりはわかりやすいと思うけど」
「父様は父様でわかりにくいんだよねぇ。やっぱ兄弟ってそういうものなんだなぁ」
「えぇ……いやまあ、キミら兄妹もまぁまぁ似て……げふんげふん」
マリアネラの兄であり、自分の甥っ子のフェルゼンとキーゼルの姿を思い浮かべて言葉を濁したアステリ。
ここで余計なことを言うとマリアネラの拳が飛んでくるので、先を言わないようにしておいた。
とは言え、謎を残すわけにはいかないだろうと。
《解答者《アンサー》》の力は彼に答えを与え、進むべき道を指し示す。
これからどうするべきか。これからどう動くべきか。
迷い子に手を差し伸べるかのごとく、コントラ・ソールは彼を導いていく。
「……彼女の……ザビーネさんの真意を、探る必要があるか」
彼が小さく呟いたその名前は、マリアネラはよく知っている。
だって、その名前は……。
「……母様?」
自分の母親の名前なのだから。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル