cunning maverick
「何故、ここなのでしょうね……」
ユーノ・フォンベルジュの調査によって、アルムが落ちてきた場所の調査は進んだ。
周囲に咲いていない花の花粉、その正体。
それはエルグランデには決して咲いていない花であり、異世界にしか存在しない。
それが証明されたのは、ジャックとモルセーゴだけがその花を知っていたからだ。
「へくしゅっっ!! ……その花、俺とモルセーゴにはだいぶ痛い」
「ぴしゅんっっ!! ……ぎぃ~~……」
「え、えっ。大丈夫ですか??」
「闇の種族除けに使われる花だからな……。へっくしょん!!」
「ぴしゅっ!! ……ぎぎぃ……」
ジャック曰く、その花粉はジャックの住む世界の魔物――闇の種族のみ作用する代物。
よく、軒先に吊るされたりポプリに使われたりする花で、闇の種族の動きを止められるそうだ。
ただ、微量なら今のジャックやモルセーゴのように、くしゃみをする程度に収まるとのこと。
「空中を舞うほどに花粉が残されていた、ということは……お花畑にいたんでしょうか?」
「なんでアルムがそこにいたかは置いといて、あり得るだろうな」
「うーん、実物は落ちてないでしょうか?」
「探してみたらあるんじゃないか? 花畑にいた可能性があるならな」
ユーノは持ってきていた虫眼鏡を使い、辺りをくまなく調べていく。
花が落ちていないか。花弁が落ちていないか。
それらが見つかれば、少しでも進展があるように思えたからだ。
「捜し物は、これかな?」
ユーノとジャックの調査中、黒い狐の面をつけた男が2人に声をかける。
彼のその手には、小さな花弁をつけた白い花。潰れていない綺麗な形の花があった。
「ありがとうございます! ……こんなに綺麗な花なんだ……」
「少しでも力を加えると崩れやすい。気をつけたまえよ」
「はい、ありがとうございま……」
ふと、ユーノは男の声と言葉遣いが気になった。
というのも、何処かで会っているような気がしてならなかったからだ。
いいや……ユーノは似ている人物を知っている。
ライトブルーの髪色で、ウェーブ状の長い髪を持つ男。
セクレト機関の高位研究員、フェルゼン・ガグ・ヴェレットにそっくりだと気づいたのは、それからすぐ。
「ふぇ、フェルゼン様……?」
「うん? ……ああ、そういうことか」
狐面の男はクスクスと笑うと、自分はフェルゼンではないことを告げる。
じゃあ、一体誰? とユーノが問いかければ、彼は名をこう名乗った。
狡猾なる異端者だと。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル