behind the scenes
「……はあ」
何処かの空間で大きくため息をついた白衣の男――ベルトア・ウル・アビスリンク。
色々と舞い込んだ出来事に頭を悩ませながらも、でも、しっかりと解決策を考えていく。
エルグランデで起きた色々なことがこちらの世界に舞い込まないように。
少しでも、侵略者《インベーダー》の影響が来ないように。
「この状態でエルとアマベルになんか言われたら地獄だなあ……」
少々休憩タイムに入ったベルトア。
ただでさえ自分のやることが多いのだから、人手は欲しい。
こうして休憩している間にも、本当なら誰かに手を借りたいもので。
「ベルトア~」
「ベルトア~」
「うげ……この陽気な言い方は……」
そこへ戻ってきたのは、青髪の男アマベルと、黒髪の男レティシエル。
2人は何やら書類のようなものを片手に、ベルトアへと近づいて……。
「ダメだ!!」
「えっ、僕達まだ何も言ってないじゃーん」
「そーだぞー。ちょっと遊びに行きたいっていうだけだよ~」
先手でベルトアが拒否反応を見せ、アマベルとレティシエルがむくれる。
何も言ってないのに拒否するのはなんでだと言いたげな表情が男2人から溢れているのがよく分かる。
それに対しベルトアは大きなため息をついて、自分の脳裏に浮かんだ予測を吐いた。
「お前らのことだからまた異世界に行きたいって言うつもりだろ!!」
「「なんでバレた!!??」」
どうやらアマベルもレティシエルも異世界へ旅行に行きたかった様子。
その証拠に、ベルトアに見せるための許可証を持ち込んでいた。
……まあ、紙切れが見えた時点でベルトアはその予測がついていたそうだが。
ともあれ、ベルトアは2人に許可を出すことは出来なかった。
忙しい、というのもそうなのだが、何より2人の行き先が……。
――エルグランデとなっていたのだから。
******
「そういえばベルトア」
「ん?」
レティシエルが椅子に座って体を伸ばしていたところで、ふと何かを思い出した様子。
色々な世界に出向く彼は、今日――12月25日が何かを知っている。
「クリスマスプレゼントちょーだい!」
「この塔に缶詰め状態の俺がプレゼント調達できるとでも?」
「えーー! 去年もちゃんと教えたじゃーん!」
「知らん知らん! この世界にクリスマスなんて文化はない!!」
わーわー喚くレティシエルと、ぎゃいぎゃい叱るベルトア。
元々エルグランデ出身な彼らには、クリスマスの文化は無いので仕方ないのだが。
12月25日。クリスマス。
エルグランデには無い文化があるこの日。
猟兵たちのクリスマスが始まる――。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル