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twin brother

セクレト機関・第2書庫にあるコンピューターの1つに、彼は座る。

彼は……フェルゼン・ガグ・ヴェレットは誰かとやり取りをしていた。

メッセンジャーの相手は……なんと、エレティック・リュゼ・ルナール

マリネロの港にいる彼に向けて、メッセンジャーでやり取りを開始していた。

【ルナ、そちらの暮らしは大丈夫か? こちらは今、大変なことになっているのだが】

軽快にキーボードを叩き、フェルゼンは画面の向こうの相手にチャットを送る。

その軽やかさはまるで、家族に送るような。

【ああ、噂には聞いている。先生が侵略者《インベーダー》を呼んだとかなんとか】

【マリネロでもそのような噂が出ているのか】

【でも、ということは?】

ルナールの問いかけに対し、フェルゼンのチャット入力が止まる。

あまり外部に情報を漏らしてはならないのだが、どうしたものかと悩んだようだ。

「……ふむ……マリィ、これはどうしたらいい?」

悩み悩んだ結果、フェルゼンは虚空に声を投げて相手からの返事を待つ。

その相手の名は――マリアネラ・ヴェレット

――ルナ兄さんには情報を出してはならないと、議会で決まっているの。

――だから、フェル兄さん。余計なことはしないで。

――Marianela Velet

「おや、まあ。先生なら許可しそうなところなのにな」

喉の奥で小さく笑いながら、フェルゼンはルナールに対しての返答を送る。

なんてことはない。答えられない、という返答のみを。

その返答が送られた直後、ルナールの言葉が一言だけ返ってきた。

【羨ましいな、フェルとマリィは】

「……っ……」

​その一言が戻ってきた時のフェルゼンの顔は、少々苦しそうな顔をしている。

当然だ。実の弟を守れなかった兄としての後悔が今も残っているのだから。

【でも、私は先生の選択肢が間違っていたとは思っていないよ】

続けて帰ってくるメッセージにフェルゼンの顔が少しだけ緩む。

ルナールが自分を恨んでいないか、エルドレットを恨んでいないかと不安だったが、

この様子だと問題ないようだ。

​【良かった】

ただ一言。

​安堵の声を上げて、メッセージのやり取りが終わる。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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