observer
「まったく、何処の世界から来たんだ?」
激戦区となってしまったマリネロの街。
応援要請を聞きつけたセクレト機関の戦闘員達もルナールと共にクラーケンと戦っている。
それでも尚、戦闘員を庇いながらの《観察眼《ディサーニング》》は危険だと判断して、
使用を控えて戦っていた。
「なるほど、そこにいるんですね!」
セクレト機関の要請を聞きつけて駆けつけた黒木・摩那。
彼女は持ち前のボードで海上をすいすい走り、クラーケンの位置へと到達。
ヨーヨーが武器の彼女は伸びてきた触手を絡め取り、そのまま海中からクラーケンを引きずり出した。
「このまま食べたらお腹壊す気がするので、水切りしますね!」
「なんて??」
食べる気でいらっしゃる? と不思議そうな顔をしたルナール。
しかし、海中に存在するクラーケンは体内の水がなくなれば生きてはいけない。
その作戦は最適解だと、エミーリアも了承した。
空の上でぐるんぐるんと大きく振り回されるクラーケン。
雨のように飛び散る海水。
とんでもない速度で降る海水から逃げ惑う戦闘員達。
戦いの様子を見てめちゃくちゃはしゃぐ海の男達や子供達。
いろんな声がマリネロの街に響き渡る。
「……」
けれど、ルナールだけは。
彼だけは違った。
《観察眼《ディサーニング》》によって手に入れた情報が、あまりにも残酷だったから。
《観察眼《ディサーニング》》によって手に入れた情報が、決定打となったから。
「……やっぱり」
大きくため息をついたルナール。
出来れば間違いであってほしいと考えていた自分の答えが、正解だと教えられてしまった。
《観察眼《ディサーニング》》は家族しか知らないこと。
現存する家族は父と妹と兄だけで。
父と妹は司令官システムにいて。
唯一、異世界に出向いてクラーケンに色々と教えて連れ込めるのは。
実兄、フェルゼン・ガグ・ヴェレット。
彼しかいないのだと。
imitator
私はいつだって、■■■■■・■■・■■■■■だった。
どんなときでもこの姿を貫いた。
けれど、もう、この姿でいられない。
それもこれも、あの子が気づいてしまったから。
ルナール――■■■■が気づいてしまったから。
だったら、もう。
逆に、開き直ってみようか。
あの子以外に気づかれていないのなら。
あの人に気づかれていないのなら。
■■■■■は侵略者《インベーダー》となったと開き直ってみよう。
私は私。
あの子もあの人も、いつもそう言っていたじゃないか。
――なあ、■■■■。
お前は、もう全部気づいたんだろう?
私が全てを仕組んだのだと。
侵略者《インベーダー》達を呼んだのも。
ジャックの誘導がズレたのも。
アルムをこの世界へ呼んだのも。
クラーケンをお前へ差し向けたのも。
私が仕組んでいたことだと。
私が。
フェルゼン・ガグ・ヴェレットが仕組んでいたのだと。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル