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isotope

誰もが寝静まった学業専門都市『ヴィル・アルミュール』。

その一画にあるアビスリンク家とヴェレット家の境目で、2人の男が相見える

アビスリンク家執事 マルクス・ウル・トイフェル

ヴェレット家現当主 フェルゼン・ガグ・ヴェレット

――どちらも、世界の敵『リベリオン・エネミー』に認定された者達だ。

「……なんの御用でしょうか、フェルゼン様」

静かに、冷ややかに。

マルクスは問いかける。

目の前に敵となる人物に、己の主と敵対する者に。

けれど、フェルゼンは冷たくあしらうマルクスに対して、こう返した。

せっかく【同位体】が来たというのに、もてなしもしないのか?

「っ……!」

【同位体】。

彼はマルクスに向けて、そう言った。

一字一句、間違いなく。

それは『リベリオン・エネミーとして』なのか。

それとも、別の意味合いを持っているのか。

……今はわからない。

しかしフェルゼンのその言葉に反論するかのように。

自分は【同位体】ではないと告げるように。

首を横に振って、自我を取り戻す。

ここにいるのは、マルクス・ウル・トイフェル。

アビスリンク家の執事であり、――――。

「……それで、僕に何か?」

ああ、率直に聞こう。アレは何だ?

フェルゼンが指を指した先にあるのは、空に浮かんだ黒い穴。

いつの間にか生まれた大きな疵。世界そのものを覗こうとする穴。

それらが生まれたのは、キャンプが行われた直後。

マルクスはその詳細を知りえるまでに時間がかかっているため、情報は入っていない。

「……さあ、僕は知りません。貴方の仕業では?」

既に《■■■■■■》を持つ者はこちらにいるというのにか?

「……まあ……それは、そうなんですが……」

 

言い淀む様子のマルクス。

フェルゼンの目的も、何を入手しているのかも知り得ているのだろう。

それ以上の反論をみせる様子はない。

それどころか、マルクス自身も気づいてしまったようだ。

空に浮かんでいる大穴が何を意味するのか。

​大穴があることで、何が起こるのか。

まあいい。邪魔はするなよ、【同位体】

これ以上の情報を獲得できないと悟ったフェルゼンはそのまま、その場から去っていく。

左手をかざし、ゲートを開いた彼はこの世界とは違う何処かへと消えた。

「……そちらこそ、僕の邪魔はしないでくださいね」

フェルゼンが去った後、小さく呟いたマルクス。

見る位置によって変わる瞳の色は、赤と緑に切り替わって空を見上げる。

真っ黒な穴の傍に、三日月1つ。

​今にも吸い込まれそうな風景が浮かんでいた。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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