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Imitation
「ミメーシスの生態のこと、今のうちに話しておかないとですね」
「お願いします、マルクス様」
響納・リズと共にヴィル・アルミュールの住人を助けていたマルクスが呟く。
いつ、自分がミメーシス側に落ちるかわからない状況。
相手のことを伝えられるのは、今のところ自分しかいないからと。
ミメーシスという生態系は、少し特殊だ。
『ミテラ』と『ペディ』、2つで1つとなっている。
と言ってもミテラは1人で、ペディはいくつも存在する手足のようなもの。
侵略する星を調査するために、ペディ・ミメーシスは送り込まれる。
フェルゼンもまたペディ・ミメーシスが乗り移り、今の状態となっているとマルクスは言う。
だけど、フェルゼンのそれは『少しおかしい』とも彼は言った。
確かにペディ・ミメーシスはその人物に溶け込むために、人物の持つ力を借りることはある。
けれど『持っていない力を利用する』ことまでは元来出来ないはずなのだ。
「じゃあ、あの時のフェルゼン様は……」
あの時、フェルゼンは自身が持ち得ていない《時間操作《クロノスタシス》》を使っていた。
でもそれは考えればおかしい。持っていないものを、どうやって使うのかと。
「所持でもなく、借りてもいない。ともなれば、あとは『模倣した』と考えるべきでしょう」
《模倣《コピー》》のコントラ・ソールと違い、完璧な模倣。
劣化することもなく、未所持のものでも完璧に。
フェルゼン・ガグ・ヴェレットは全てのコントラ・ソールを『模倣している』。
否。彼が模倣しているのはコントラ・ソールだけではない。
司令官システムの機構すらも、彼は模倣している可能性があるのだ。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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