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奥底.png

I did it because I love you.

――これは、司令官システムの奥底にいるある人物の独白。

――誰にも言えないからこそ、今、これを読む『あなた』へ告げる。

​私の名前は、■■■■・■■■・■■■■■。

私は、彼の記憶を消しました。

私は、彼の心を守り抜きました。

私は、彼を愛し続けました。

彼の中から消えた記憶。

子供達に虐待を施し、永遠に宇宙の謎を解こうとしていた彼の記憶。

それら全てを、私は消しました。

怒られようとも、恨まれようとも。

それが彼の心を守るためであると、私は考えたから。

スヴェン・ロウ・ヴェレット

侵略者《インベーダー》を呼び寄せてしまった、全ての元凶。

​誘導されて、唆されて、彼は宇宙を揺蕩う大いなる存在に手を差し伸べた。

その時の彼の心は、大きくひび割れて、すぐにでも崩れそうだった。

己の身体を顧みず、ただひたすらに宇宙の謎を追いかけたいと願う彼。

大いなる存在に手を貸したと気づいたあとも、たくさんの宇宙の謎を追いかけて。

いつしかその身体は病に蝕まれ、心が壊れる中で必死に生きようとしていた。

そんな中で、私は。

彼を救いたいという一心で、薬を探して。

そうして私も、彼と同じように間違ったモノに手を出した。

気づいた時には手遅れで、子供達への教育を念入りに行う化け物へと成り果てて。​

私も、彼も、子供達の恐怖の対象となった。

そうして、彼の心は一瞬にして滅びを迎えてしまった。

子供達を壊したこと。世界に滅びを与えたこと。

それら全てが、彼の心に大きな傷を与えてしまった。

自業自得だと言う言葉が、幻聴となって聞こえてしまうほどに。

その言葉を返すように、《呪術師《マーディサオン》》を持った彼は。

やがて、新たな力が芽生えたからとこの場所へやってきた。

私もまた、《■■《■■■■》》を新たに宿した故に、この場所にやってきた。

だから、私は。

彼が、完全にこの場所に馴染んでしまう前に。

彼が、壊れたままになってしまう前に。

司令官システムの頂点たる者に協力してもらって、彼の記憶を消しました。

これが正しかったのかは、今となってはわからない。

これで正しかったのかは、私にはわからない。

けれど私には、彼しかいないから。

彼が壊れるようなことは、したくないから。

これから、私はこの場所にとって『間違ったこと』をします。

それが本当に『間違ったこと』なのかは、私にはわかりません。

けれど、彼のために。

彼が思い出すことを拒まないように。

彼がこの世界を否定しないように。

彼が自分を苦しめないように。

彼を守るために。

​私は、『間違い』を突き進みます。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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