


He was a professor
「っあ"~~~~汚ぇ」
「家帰らんからそうなるんやろ」
ヴィル・アルミュールのヴェレット邸では、スヴェンとローラントでえっちらおっちらと掃除をしていた。
猟兵達が来るまで開かずの家だったせいか、埃がたくさん積もっているようで。
隣のアビスリンク邸から借りたハタキをべしべしと叩きつつ、少しずつ綺麗にしていった。
「でも思ってたよりは綺麗やと思いますよ?」
「まあ、人の目にはそう映るか」
「スヴェンさんにはどう映ってるんすか」
「逐一モニター越しにゴミの指摘、埃の指摘が入ると思ってくれ給え」
「えぐっ」
スヴェンの目を通し、司令官システムのメンバーが汚れを指摘する。
あれが汚い、どれが汚いと指摘されてはスヴェンが適時掃除をして、指示がなくなるまで繰り返した。
やがて2人はリビングへと入る。
広々とした空間には子供たちが遊べるようなスペースも作られており、
子供たちが大人となった今は物置スペースとなっていたようだ。
「……おっ」
そんな物置スペースの中に懐かしいものを見つけたのか、スヴェンが近づく。
と言っても彼が手に取ったのは書籍。それも、自身が書いたものだ。
「これはオレが25の時に書いた論文本だな。いやぁ、懐かしい」
「どんな本なんです?」
「『宇宙とは無限に広がり続ける箱』という理論をもとに書いたものだ。読むかい?」
「いや今仕事中やから。そんなんしてたら給料減ってまう」
意気揚々と論文本を掲げるスヴェンに対し、ローラントはため息をついた。
オルドヌングは薄給故に、些細な停滞が給料に響いてしまう。
そうなるとエミーリアにプレゼント買ってあげられないし、
エミーリアが行きたいところに連れていけなくなるし、
エミーリアに美味しいもの食べさせてあげられなくなるし、
エミーリアが欲しいものを買ってあげられなくなる。
何よりもエミーリア優先なローラントは、思わず虚空に対して声を上げた。
「リアさーーん!! 俺頑張ってますからねーー!!」
「うわうるさっ」
思わず耳をふさいでしまったスヴェン。
その言葉は、司令官システムを通じてエミーリアに届けられたが……。
ローラントの想いは、エーミール優先のエミーリアには届かないのである……。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル