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beyond the shadow
子供達が見ている先が、影がやってきた世界ではないか?
そう仮定を組み立てた黒木・摩那。
子供達を模倣して作られた存在ならば、帰る場所を見てしまうのも可能性は高い。
そこで1人ずつ子供達を観察し、地図と重ね合わせて何処を見ているかを調査していく。
調査の結果、影達はほとんどはマリネロの街を指し示していた。
だが、ごく少数ではあるがマリネロの街とは違う方向を見ている子供達もいた。
「ええと、あの場所は……?」
「あそこは……」
摩那の視界にもうっすらと映っている、ドーム型の建物。
赤く輝く外壁が特徴的なその都市の名は『学業専門都市』ヴィル・アルミュール。
――その名を告げるときだけ、フェルゼンの視線が逸れる。
子供が行方不明になったら、それこそ大都市ほどの大きさならば事件として騒がれるだろう。
けれど、事件として騒がれるならセクレト機関にも連絡が行っているはず。
それなのに機関側に何も情報がないことから、都市側は事態を危険視していない可能性が高い。
「向こうの都市ではあんまり大騒ぎになってないんですね?」
「まあ、あの都市ではなぁ……」
何やら大きなため息をついたフェルゼン。
何か、これ以上思い出したくもない思い出がある様子を見せている。
ヴィル・アルミュール。
鎧《armure》の名を冠する都市。
その都市の子供達もまた、模倣されてしまっているようだ……。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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