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夏休み!
「なあ、おっさん。燦斗とかエーミールが夏休み知らなかったってマジ?」
「どうした急に。まあ、確かにセクレト機関のメンバーは知らんかもしれんな」
マリネロの街の海水浴場。
そこではルナールとジャックが猟兵達の夏休みを眺めている。
夏休みだから、というのは2人共よくわかっているようだ。
ルナールはこのマリネロの街に来てから。
ジャックは異世界人だから。
どちらも住んでいる環境が環境なので、夏休みを享受出来るそうだ。
そのためエルドレット、フェルゼン、ヴォルフと違い猟兵達の夏休みを羨ましそうにしている。
「まあ、俺らも彼女たちを案内したし、夏休みしてると言えばしてるのか」
「そうだな、確かにそうだ。まああまり許されたものではないだろうが……」
「人間、休みは必要だよ。自分でもつらいなって時には休むべきだ」
「おぉう、鋭いナイフが飛んできた。司令官システムも考えを改めてくれると良いのだが」
仮面の奥で小さく笑ったルナール。
これまでにシステムによって自主的な休みを取れなかったことを思い起こしているらしい。
一方でジャックはまだシステムの話をされてもよくわかっていない。
彼は機械の類のない魔法文明の世界から来ているようで、システムという単語さえもよくわかっていなかった。
「ふむ。その辺りの話もきちんとしておいたほうがよさそうだな?」
「頼む。こっちに来てからわからないことばかりでよ」
「……ちなみに、何処までわからない?」
「全部」
「全部ッ!?」
ルナールが聞いたこともない声で驚きを見せ、ジャックは首を傾げる。
どうやら、ルナールには夏休みが来ることはなさそうだ……。
これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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