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​なつ……やすみ?

猟兵達が夏休みを満喫する頃、セクレト機関の司令官室では男3人が首を傾げていた。

「え、ゼン、ヴォルフ、夏休みって何?」

「知らん……なにそれ……??」

「なんか、別の世界では夏に休みを取るらしいですよ」

「えっ、夏に? なんでまた」

「さあ……?? 暑いから、でしょうか」

「それで言うと俺は毎日暑いんだが?」

『夏休み』という概念のない組織、セクレト機関。

調査人や研究員の適切な休みは各個人の体調に合わせ、司令官システムが確保する。

そのため、そもそも夏休みや冬休み等の大型連休はない。

猟兵達が自由に夏休みを満喫していたとしても、彼等にとっては概念がないのだ。

なお、司令官であるエルドレットやその補佐であるヴォルフはもちろんのこと。

高位研究員で全研究を見なければならないフェルゼンの休みは一般研究員よりも取得が少ない。

……真っ黒企業?

そう言われればそう。

「ルナが聞いた話では、海へ行ったり、プールで遊んだりするそうです」

「はえー、海か。マリネロの街で海水浴場開いてるのは聞いてるけど、そこで遊ぶってこと?」

「海で何するんだよ。釣りか?」

「釣りもあるが、泳いだり、ボートで遊んだり……様々らしい」

「冷たい水で遊んで暑さを和らげるのか。いいなー」

「まあ確かに、暑いと冷てェのが欲しくなるからなァ……」

大きくため息をついたヴォルフに合わせ、フェルゼンもため息。

今すぐにでも仕事を投げ出して海に遊びに行きたいのが本音だが、それを口にすることはない。

一方でエルドレットはずっと考え込んだ。

羨ましいとか、楽しそうとか、やってみたいとか、色々あるが……。

「……うちって他の世界に比べて、もしかしてヤバい組織ってことにならん?」

どうやら、セクレト機関が真っ黒過ぎる組織かもしれないと気づいたようだ……。

「……まあ、休暇取得が全部自動割り振りなので……自分で取れないってのはちょっと……」

「ドが付くブラックかもしれねェな……」

「うげぇ……これちょっと後で皆と一緒に考えとくぅ……」

眉根を寄せ、次の司令官議会の議題を思いついたエルドレット。

せめて休暇取得が自主取得出来るように調整するとのこと。​

その後は暑さに耐えきれなくなったヴォルフがアイスを買いにいったとさ。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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