


Lost property
「ルナールさん、アイス、なにがいい?」
「ふむ。いちごアイスにしようか」
マリネロの街にやってきた唯嗣・たからはまず、アイスを買った。
今日はとても暑い。暑いから、冷たいものでも食べながら探索したい! と。
せっかくだからルナールとエルドレットも一緒にアイス食べよう! と。
子供の優しさを無下にすることは出来ない2人は、もちろん一緒に買って食べた。
アイスを食べながら海岸を探索してみると、いろんな物が落ちていた。
壊れた機械の部品。文字の読めないメモ。
このあたりには生えていない巨木の枝。
キラキラと輝くクリスタルの破片……などなど。
様々な目を引くものが海岸の砂場には埋まっているようだ。
「たから、いっぱい、掘る!」
「怪我しないようにね」
そんなたくさんのお宝を前に、掘り返さないなんてもったいない!
ということで、たからはまずキラキラ輝くクリスタルの破片を集めた。
掌に収まるほどの小さな欠片。
集めれば集めるほど輝きは強くなり、やがてそれは一つにまとまる。
虹を固形にしたようなそれは、たからの手の上に収まって……。
「んえ?? 何処にあるんだ??」
「えっ??」
たからの手の上に輝く結晶があるというのに。
ルナールにも、たからにも見えているというのに。
エルドレットにはその結晶が見えていなかった。
それどころか、マリネロの街を監視しているエスクロにも。
エルドレットの目を介して情報を得ている司令官システムのメンバーにも。
彼らの目にはたからの掌の上にある結晶が見えていなかったのだ。
「なんでぇ??」
「なんでだ……?」
「うーん、わかんない!」
この結晶がなんなのかは、たからにはわからない。
だけど、何故かこの結晶を手にしたときから不思議な気持ちにはなっていた。
結晶をアルムに返さなければ、と。



これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル