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Someone is here
「わあ……!」
ゲートの先に広がる世界を響納・リズは目に焼き付けた。
またとない、エルグランデ以外の別の世界を見る機会だからと。
白い百合のような花が敷き詰められた世界。
花畑の先には山とレンガ積みの城壁が見えている。
世界には風が吹いており、花弁と花粉が空に舞い上がっているのが見える。
その2つがゲートを通り、今、マリネロの街の海岸にも広がっているようだ。
しかし、唐突に聞こえてきた声があった。
――近づくな。
――この世界は、私とあの子が使うのだから。
声の主が誰なのかはわからない。
けれど、その声はルナールにも似ている。
だけど、ルナール本人は地上にいるから、あり得ない。
「あなたは、いったい……」
誰なのか。
それを問いかけようとしたところで、リズに向けて炎が射出される。
ゲートの向こうにいる誰かが、明確に彼女を『敵』だと認定して。
すぐさまリズは距離を取り、ゲートから離れた。
だけど、もう一度ゲートの先を見た時には……もう、誰もいなかった。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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