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港

Professor

「ねーねーせんせー、ここの問題わかんなぁい」

「うん? ああ、そこはね……」

マリネロの漁港、とある民家で数人の子供たちがある男性を囲んで勉強をしている。

彼のことは街の誰もが『教授』『先生』と呼んでいる。

この漁港の近くに居を構えているようで、時折こうして子供たちの勉強を見てくれるのだ。

「私の答えはこうだけど、キミや彼らの答えはこうなった。何故だろうね?」

「うーん、うーん……あ! 先生と僕の計算式が違う!」

「大正解。けど、私がなぜこういう式を作ったのかわかるかい?」

「うーん……わかんない」

「わかんなぁい」

「では、一旦みんな計算を止めて解説を始めよう。ノートを準備したまえ」

先生と呼ばれている男は子供たちに見えるようにノートを広げると、少しゆっくりと解説を始める。

子供たちにわかりやすく、けれどしっかりと計算式を覚えられるように

わからないと告げる1人1人の言葉に耳を傾けながら、優しく、丁寧に教えていた。

しかし、しばらくするとその手と解説が止まる。

数秒ほど言葉を止めた彼は小さなため息をつくと、子供たちに謝罪の言葉を述べた。

「キミたち、すまないね。今日はこの解説が終わったら、授業はおしまいだ」

「えー! まだ時間じゃないのにー!」

「先生、なにかあったのー?」

「うぅん、そうだね、お仕事が入ったんだ。だから、今日はこの解説でおしまい」

「うーん、先生ってお仕事してたんだ」

「何のお仕事ー?」

子供たちの次々の質問が聞こえてくる中、やはり子供たちが気になるのは男の職業。

男は少々答えを渋っていたが、子供たちの好奇心には勝てなかったようで。

一言だけ、彼は告げる。

「私はね、セクレト機関の上位研究員だよ」

その言葉を聞いて、子供たちは首を傾げていたそうな。​

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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