



missing person
「……やりやがったな、あの野郎……」
どこかの空間で、ポツリと呟く白衣の男。
ぐしゃぐしゃと頭をかいては、してやられたと言いたげにため息をつく。
これはまた、難儀なことになりそうだ、とも。
「どうしたの?」
「わ、またいろんなの出してる」
そこへやってきたのは執事服の男性と、薄着の男性。
白衣の男がコンピュータを操る一方で、彼らは男が何をしているのかわからない様子でいた。
椅子を新たに作り出し、2人は白衣の男が用意したお茶を一緒に飲む。
「お前らがこっちに戻ってくるなんて珍しいな。何があった?」
「僕は丁度、近くでギルド仕事があったからね。そのついでだよ」
「僕はちょっと調べてほしいことがあったから、かな」
「調べて欲しいことぉ? また俺に何を頼むつもりだお前は……」
はたから見れば、彼らのやり取りは友人との会話のようにしか見えない。
けれど、内容としては人間が行うそれとはまた違っていた。
執事服の男性は『ゲートが開かれた』と白衣の男性に告げる。
どの国のどの場所で、いつ何時に開かれたか。
それをしっかりと把握しており、尚且つそのゲートで巻き込まれた人がいないかを調べたいとのこと。
「めっずらし。エルがそんなこと気にかけるなんて」
「ああ、いや。僕じゃなくて、ベルディが『アルム様が帰ってない』っていうからさ」
「あ、ああー……姫さんなら巻き込まれた可能性あるなぁ……」
「だから、キミなら探せるでしょ? 時間と場所さえあれば」
小さく微笑んだ執事服の男性はそれなりに白衣の男を信頼している様子。
対して白衣の男性は少々めんどくさそうな顔を見せたが、ちゃんと人探しはしてくれるようだ。
しばらくコンピュータと向かい合って、教えてもらった日時と場所を調べて……。
「……あー……」
白衣の男のその声で、2人の男もなんとなく状況が飲み込めてしまっていた。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル