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the maverick laughs
「同志からの連絡は以上となる。質問は?」
「無いね。無い。彼の説明は本当に完璧だ。これから起こることがよくわかる」
ライトブルーの長髪を持った男は大きなため息をついて、報告書を受け取る。
彼が手にしている報告書は殆どが手書きのもので、読みづらさがひどい。
けれど長髪の男は簡単に解読してみせた。
――まるで昔からの友人の手紙を読むかのように。
「しかし、困ったな……。こちらも少々面倒なことが起きているのだが」
「面倒なこと……如何様な?」
長髪の男は報告書を机に放り投げると、長身の男へと向き直る。
今現在起きている面倒なこと――マリネロの漁港に落ちた女性のことだ、と。
「簡単に言えば、来訪者だ。彼の世界からの、ね」
「ああ……。そういえば、姫様がこちらに移動したと」
「おや、それなら話は早い。彼女、暫く借りると彼に伝えておいてくれないか?」
「借りる? 何故、姫様を借りるのでしょう」
長身の男は納得がいっていない様子で、長髪の男に問いかける。
姫様と呼ぶ程の身分を持つ女性だ。ここで帰さなければ問題が起きてしまうと不安げに。
けれど長髪の男はゆるりと笑って、一言だけ彼に告げた。
「彼女もまた、物語を終わらせるための歯車にすぎないのでね」
夕暮れの背景に、マリネロの灯台からの光が灯された。

これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル
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