
I live for you
私の生命は、お前のためにある。
私の生命は、お前を助けるためにある。
●●●●。私はお前を助けるために、こうして表に立った。
かなり危険な橋を渡っていることは、充分承知の上。
私は、お前のためにやるべきことをやるだけだ。
幾度となくお前は私を助けてくれたのに、私はお前を助けられなかった。
私はいつだって自分の力が足りないことを恨んでいた。
お前を助けることが出来ない私を、何度も恨んだ。
幼い頃からの両親の虐待。
教育と称したいくつもの体罰。
テストの成績が足りなければ食事を抜かされて。
評価が低ければ傷を1つ。
父も母も、私とお前を子としてみることはなく。
私もお前も優秀な存在でいなければなかった。
気づけばお前は、私を助けるかのように成績を伸ばして。
父と母を黙らせるほどに、優秀なモノとなって。
私よりも遥か高い存在へとなっていて。
いつの間にか『教授』なんて呼ばれるようになっていた。
こんな私が出来ることなんて、なにもなかった。
お前より先に生まれておいて、何も出来なかった。
父も母も、私がどうにかするしかなかったのに。
それでもお前は私を『兄』だと呼んでくれた。
お前は私に『世界を嫌いになるな』と言ってくれた。
お前は私を『頼りにしている』と言ってくれた。
私が何も出来ないと言ったとき、お前は言ってくれた。
『兄貴に出来ることはきっとあるよ』と。
私が何も知らないと言ったとき、お前は言ってくれた。
『兄貴にしか知らないことはいっぱいあるよ』と。
私が何もわからないと言ったとき、お前は言ってくれた。
『オレだってわからないことはあるよ』と。
その言葉で、どれだけ私は救われたと思う?
その言葉で、どれだけ私は嬉しかったと思う?
お前はきっと『宇宙の前では些末なこと』って言うかもしれないけれど。
私にとっては、今も、大切な記憶だよ。
ねえ、●●●●。
お前が呼んでしまったこの侵略者《インベーダー》・ミメーシス。
私が、なんとか出来るよ。
『私の身体に移して殺してしまえばいい』。
私は不完全にも、《無尽蔵の生命《アンフィニ》》に似た力を手に入れた。
言うなれば《不完全な生命《インコンプレータ》》。
エルグランデでは生きることが許されなかった、不完全な生命。
あの子が作った世界でしか生きられなくなった生命だ。
お前のために、私はミメーシスの身体となろう。
お前が犯した罪を、私は流してあげよう。
お前の『強欲』を、私が奪い去ってあげよう。
全てはお前が愛した星のために。
……なんで、そんなことをするんだって?
そんなの、最初に言ったとおりだよ。
――私の生命は、お前を助けるためにあるんだよ。スヴェン。


これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル